=== 随筆・その他 ===

シリーズ医療事故調査制度とその周辺(13)

医療事故調査制度の施行に係る検討会(2)
−医療事故の定義と支援団体の役割・センター業務ポンチ絵の修正−




 中央区・清滝支部
(小田原病院)  小田原 良治

 2014年(平成26年)11月26日に第2回医療事故調査制度の施行に係る検討会(以下,施行に係る検討会という)が開催されるが,筆者と厚労省は資料作成について,事前に密に打ち合わせを行うこととなった。第2回から第4回の検討会は,流れを決めた重要部分である。この事前の厚労省との打ち合わせ内容については,知っている者はごく少数であり,筆者もずっと沈黙を守ってきた。今回,記載する事前協議の内容を公表することにしたのは,ある出来事があってからのことであり,まぼろしの図として公表したのは,2015年(平成27年)11月18日,東京の東医健保会館で開催された日本医療法人協会主催のシンポジウム「医療事故調対策のポイント」においてのことである。ある出来事というのは,2015年(平成27年)6月25日,鹿児島県医師会主催の「医療事故調査制度に関する研修会」である。

1.鹿児島における二つの講演会スライド
 2015年(平成27年)3月20日,施行に係る検討会とりまとめ「医療事故調査制度の施行に係る検討について」が出されることになったが,同年4月25日,筆者は,講演会「医療事故調査制度の開始に備えるために」を城山観光ホテルで開催した。厚労省パブコメ終了直後開催の講演会であり,施行に係る検討会の担当課長であった,厚労省の土生栄二総務課長を招いての講演会である。重要課題である「医療事故の定義」について,土生栄二総務課長は図1のスライドを提示した。検討会合意そのままのスライドである。施行に係る検討会とりまとめをそのまま省令・告示・通知にすると明言した。一方,2カ月後の同年,6月25日,鹿児島県医師会主催の研修会で大坪寛子医療安全推進室長が使用したスライドが図2である。図1と図2を比較していただきたい。図1の「医療事故の範囲」と「過誤の有無を問わない」が,図2では,黒い枠で隠されている。この図2のスライドを,それまで,各地医師会・各厚生局主催の全ての講演会で大坪寛子医療安全推進室長が使用していた。

図 1 2015年4月25日土生栄二総務課長スライド(3月20日とりまとめと同一スライド)

図 2 2015年6月25日鹿児島県医師会講演会大坪寛子医療安全推進室長スライド
   (「○医療事故の範囲」,「※過誤の有無は問わない」の記載が隠されている)


 筆者は,厚労省にこのような黒枠のスライドの使用は法的に問題ではないかと質した。その結果,同年8月8日の関東甲信越医師会のスライドから図3の如く,「過誤の有無を問わない」の文字が復活した。「過誤の有無を問わない」は,この制度の「医療事故の定義」を理解する上で,最も大事な部分である。しかも,文字として,「過誤の有無を問わない」が明示されているのは,このポンチ絵部分のみなのである。
 この「過誤の有無を問わない」の記載は極めて重要部分である。厚労省医療安全推進室にはあらゆるところからプレッシャーがあったと聞いているが,医療現場に医療事故調査制度を法律に沿って正確に理解してもらうためには,ここに至る経緯を知ってもらう必要があると判断した。
 このような経緯から,沈黙を守ってきた筆者は,「医療事故の定義」部分の事前打ち合わせ事項を,2015年(平成27年)11月18日,日本医療法人協会主催の,シンポジウム「医療事故調対策のポイント」の講演中にまぼろしの図(図4)として公表した。

図 3 2015年8月8日関東甲信越医師会研修会大坪寛子医療安全推進室長スライド
   (「※過誤の有無は問わない」の記載が復活している)

図 4 医療事故の定義まぼろしの図
   (第2回施行に係る検討会事前配布資料として厚労省から提示のあったポンチ絵。
    医療事故の定義を正しく表していないとして,筆者が厚労省に修正を求めた)


2.第2回医療事故調査制度の施行に係る検討会事前協議について
 厚労省は医療事故調査制度成立に向けて多大の努力を払った。頭が下がる思いである。筆者とも詳細に事前打ち合わせをしてくれた。第2回検討会に向けても,筆者の提案を数多く,検討会資料に反映してくれた。ただ添付のポンチ絵については,意見の不一致があった。第2回施行に係る検討会厚労省事前配布資料の,医療事故の定義についてのポンチ絵(図4)とセンター業務@のポンチ絵(図5)についてである。センター業務@のポンチ絵(図5)については,筆者もすぐに問題点に気付いた。複数医療機関から集めた情報をセンターで分析後,複数医療機関に帰すような図に修正するよう意見を書いていた。医療事故の定義についてのポンチ絵(図4)については,当初,筆者も気づいていなかった。厚労省に返事を送る前に,顧問の井上清成弁護士と協議を行ったところ,図4はおかしいのではないかと言う。よく考えてみると確かにおかしい。検討会前日の11月25日,とりあえず厚労省に連絡,Faxを送った後,18時15分羽田到着予定の便で東京へ向かった。筆者が厚労省に送った手書きのポンチ絵については,本シリーズ11(本誌57巻1号2018年)を参照いただきたい。

図 5 センター業務@につき,第2回施行に係る検討会事前配布資料として厚労省が提示したポンチ絵(一医療機関のデーターを分析して,一医療機関に結果を返すような絵となっている。法律に沿わない絵であるとして筆者が厚労省に修正を求めた)

 ホテルにチェックインした途端に,厚労省から電話が入った。「ご指摘部分は修正させていただいた」というものであった。礼を言い,電話を切ろうとしたが,ふっと気になった。「医療事故の定義部分のポンチ絵も修正していただけましたね」と確認したのである。なぜ確認したのかわからない。ふっと確認したのである。「あれは,ポンチ絵は,そのまま行かしていただきます」という返事であった。「それは,おかしい。今からそちらに行きます」と言い,電話を切ってすぐに厚労省へ向かった。電話連絡をくれた補佐は不在だったが,残業中の田上喜之補佐が応対してくれた。厚労省案のポンチ絵は不適切であり,了解できないことを強く申し入れた。翌日10時からは,施行に係る検討会が開かれる。配布資料印刷のために,輪転機は既に回っていた。田上喜之補佐が輪転機を止めさせた。上司と協議するとの返事を聞き,筆者は厚労省を辞した。結局,医療事故の定義についてのポンチ絵は削除され,掲載されないこととなった。まぼろしの図となったのである。
 井上清成弁護士が講演で,「小田原先生が厚労省に走って行って,輪転機のスイッチをガチャと切った」と面白おかしく話したのはこのことである。
 第2回施行に係る検討会終了後,筆者は,医療事故の定義のポンチ絵(図6)を作成,12月2日,井上清成弁護士と厚労省に赴き,土生栄二総務課長に図6を示して,今回の制度の「医療事故の定義」を確認,土生栄二総務課長から,筆者らが提示した図6の通りである旨の返事をもらった。
 厚労省は,第4回施行に係る検討会で図6と同じ内容の図7を厚労省案として提示した。

図 6 2014年12月2日,厚労省総務課長へ筆者が提示した「医療事故の定義」ポンチ絵(事前打ち合わせ資料)

図 7 第4回施行に係る検討会提示の厚労省資料(医療事故の定義図)


3.第2回医療事故調査制度の施行に係る検討会議事概要
 このようにして,翌日11月26日10時から第2回施行に係る検討会が開催されたのであるが,以下に,第2回施行に係る検討会議事の抜粋を記載するので,当時の状況を把握していただきたい。
佐藤一樹参考人(田邉 昇構成員意見書説明)
 一部の構成員にWHOドラフトガイドラインの視点が欠落している。(1)WHOドラフトガイドラインは,アカウンタビリティーの側面を捨象して,非懲罰性,秘匿性,独立性,専門性,適時性,システム指向性,反応性を有した学習目的の報告制度が望ましいとしている。大綱案などの「失敗」の轍は踏まず,安全という利益を客観的・科学的に全国民,全患者,全医療者が享受できる制度を作るべき。モデル事業は完全に失敗だった。(2)遺族は患者ではない。多くの「患者」の関心事は,事故調査委員会が開かれたり,第三者機関が原因究明をすることではない。自分の手術が安全かつ効果的に行われ,医療従事者が自分に向き合い,手厚く,こころのこもったケアをしてくれること。本事故調査制度で悪影響を受けるであろう医療資源は,@事故医療機関の調査のための,院内委員の時間及びコスト,A外部委員の属する医療機関の時間とコスト,B当事者とされた医療従事者の心理的圧迫,負担による萎縮診療,立ち去り,転科。(3)予算の視点欠如。(4)科学的視点欠如。(5)義務を政府から国民に課すという賦課規定である。国民である医師らに行政法規によって義務を課すもの。義務を賦課する以上,根拠に科学的合理性がなければならず,必要最小限でなくてはならない。(加藤構成員の,「過誤の類型」が落ちてしまうとの意見に反論)センター報告の際の「過誤」類型は,仮に医療機関や当事者が「過誤」を認識している場合であっても設けるべきではない。自白を義務付けることとなる。
 予期しない死亡事例の中には,事後的,法的な検討からは,「過失」要件に該当するケースもあろうが,事故発見の時点で,過誤であると認識できるようなケースは医療法人協会案のように,事故調査に時間をかけるよりも遺族対応を十分に行うべきである。本制度で重視するべきは社会常識ではなく医療安全である。
大坪寛子医療安全推進室長
 資料説明
山本和彦座長
 医療事故の定義以外の部分の議論を先に行う。
大坪寛子医療安全推進室長
 図8(センターへの報告事項),図9(支援団体等)他説明

図 8 医療機関からセンターへの報告について(医療事故の発生報告)

図 9 支援団体(案)及び,厚労省提示支援団体とセンターとの役割分担(「医療事故の判断など制度全般に関する相談窓口がセンターのみに限定されている)

小田原良治構成員
 この図8の医療機関からセンターへの事故の報告は,「発生報告」,要するに,起こった場合,とにかく一報を入れる話なので,細かいことは不可能だし,最初思ったことと調べたことと異なってくるということは,あることなので,報告事項は,上の4つ(@医療機関名/所在地/連絡先,A日時/場所/診療科,B医療機関の管理者,C患者情報(性別/年齢/病名等))位に限定すべき。図9支援団体(案)の役割分担で,センターが医療事故の判断など制度全般に関する相談窓口になっているが,センターは調査権限のあるところなので,そこが最初の細かい医療事故の判断とか,そういうことの相談に乗るというのは,仕組みとしておかしい。相談窓口は支援団体にすべき。
山本和彦座長
 図8のセンターへの報告事項について,医療事故の内容に関する情報と掲げられているのは,報告時点で可能な範囲と書かれているが,それでも難しいと考えているか?
小田原良治構成員
 一番大事なことは,遺族への説明。内容は,最初そこで思っていたことと,関係者,当事者,いろいろ話を聞くと変わってくることがある。第1報は管理者が報告なので,齟齬があると院内の人間関係,遺族との関係もおかしくなるので,極力,これが起こった,今から調査しますという最低限の範囲にとどめるべき。詳しい報告は後日出すわけなので。
松原謙二構成員
 小田原構成員の意見に賛成。最初は状況がわからないので,わかる範囲のシンプルなものでなければ,後の整合性がとれなくなる可能性がある。シンプルが良い。センターに相談せず,支援団体にまず相談するというのも小田原構成員に賛成。
宮澤潤構成員
 医療事故の内容に関する情報は,当初から書くべき。
小田原良治構成員
 医療安全の仕組みである。最終報告書も出す。院内調査が主体なので,内容をセンターに報告する必要はない。センターはどこでこういうことが起こったという概要の把握だけで十分ではないか。何をするために,当面こう考えたということを報告する必要があるのか。
加藤良夫構成員
 スタートにおいて,どういう事故,どういう予期しなかった死亡事故があったのかということの概要がわかるような報告をすべき。
大磯義一郎構成員
 匿名化するためのケアがなされるべき。
永井裕之構成員
 書けるところ,わかるところについて書いて,早くセンターに出す。1カ月をめどにセンター報告というのは余りにも遅すぎる。できることを遺族に説明し,1カ月も放っておくのではなくて,早くだす。
加藤良夫構成員
 きちんと調べようとすれば,解剖とかAiとか,その他の仕組みも活用して死因の究明とか必要。「遅滞なく」と条文は書いてあるが,速やかに24時間ぐらいのうちにできることだろう。
小田原良治構成員
 大きな誤解があるのではないか。大原則,まずやるべきことは,現場で遺族その他に説明する。それは24時間も何も,ずっと継続している話。ここは,あくまでもセンターへの報告の話。今回の仕組みは医療安全の仕組みとして作った。院内調査主体の仕組み。遺族への対応はずっと継続している話で,1カ月間遺族に話をしないということは一言も言っていない。センターに報告するとすれば,該当するかどうかを院内で判断して報告するわけなので,24時間とか,そういうことは,とてもできない話だ。
山本和彦座長
 「遅滞なく」という文言が使われており,法令用語としては,「遅滞なく」というのは,速やかによりは長い期間を一般的には指す。
加藤良夫構成員
 図10,通知の欄に「報告書の取扱」についてというのがあって,「医療機関は,院内調査過程の内部資料については,外部に公表,開示しないこととする」とある。医療事故調査・支援センターは外部にあたらないですねと確認したい。

図10 医療機関からセンターへの調査結果報告(内部資料は外部に公表,開示しない)


大坪寛子医療安全推進室長
 センターが外にだすことはできない。センターに対して必要な情報は報告することになると思うので,センターは外部には当たらない。
小田原良治構成員
 今の説明はおかしい。これは院内調査委員会の話。センターは当然外部。院内調査の院内以外は外部。これは当たり前。
大磯義一郎構成員
 原則として院内調査における内部資料なので,センターは当然外部。当たり前の解釈。
土生栄二総務課長
 院内調査の過程の内部資料は,医療機関としては外部に公表,開示しない。
 ただ,その後,第三者機関の調査がまた改めて入った場合,資料の提出,その他必要な協力を求めることができるとなっている。院内調査の段階では,センター調査までいくかどうかがまだ決まっていない。そういう意味では,医療機関としては外部には公表,開示しないということで記載している(要するに,院内調査段階では,センターは外部ということであり,基本的に筆者の主張を認めた)。
嘉山孝正代理人
 遺族に報告書を渡して,遺族がその報告書を例えば警察に出すことができるのか?
土生栄二総務課長
 遺族への説明方法は,「口頭又は書面の適切な方法を管理者が判断する」という案を出してあるが,書面で渡した場合に,その書面をどのように扱うかというのは,遺族の判断。医療法上,法的に止める手立てはない。そのことを踏まえて議論を(この発言は,極めて重要である。土生栄二総務課長は,遺族に渡した書面は遺族の判断でいか様にでも使われる。これを法的に止める手段はないことを明言し,このリスクを前提で議論するように述べている。要するに,危ないと警告しているのである。筆者らが最後まで,院内調査報告書そのものを遺族に渡す義務化に反対したのは,このようなリスクが避けられないからである)。
加藤良夫構成員
 5月29日とりまとめ(平成25年5月29日「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」とりまとめ*)で,「院内調査の報告書は,遺族に十分説明の上,開示しなければならないものとし」と書いてあるので,「遺族への説明」というところは報告書そのものを交付するときちんと書き込むべき。
小田原良治構成員
 厚労省Q&Aに記載があるので,厚労省が出したQ&Aについて,厚労省から説明してほしい。田邉構成員からの書類も出ているので佐藤参考人から説明してほしい。
大坪寛子医療安全推進室長
 本年(平成26年)6月に法律が成立した後に,それまでの議論を整理して,Q&Aを出した。改正医療法に基づいた考え方を厚労省のほうで掲載している。
佐藤一樹参考人
 法律にのっとった制度でなければいけない。法律がもう出来上がっているのだから,それ以前のもの(平成25年5月29日厚労省とりまとめ)に書いてあるから,こうあるべきという議論はおかしい。
松原謙二構成員
 賛成。法律に基づいて,このガイドラインをつくるべき。
松原謙二構成員
 厚労省の指定するセンターは1カ所か,あるいは複数カ所か?
土生栄二総務課長
 予算の制約もあるので,基本的には1カ所を指定することを考えている。
松原謙二構成員
 医療安全調査機構と医療機能評価機構と,できれば2つ指定してほしい。
小田原良治構成員
 制度上はセンターは1つということではない。適格なところがあれば複数あり得ると言うことでいいか?
土生栄二総務課長
 法律の規定として,1つに限るという文言はない。法律の運用としてはそういう可能性はある。現段階では,厚労省は1つ指定することを考えている。
小田原良治構成員
 センターが複数の場合と1つの場合と,支援団体のあり方と業務分担が変わる。センターが1つということで,支援団体について検討するということでいいか?
土生栄二総務課長
 1つのセンターを指定して,さまざまなところが支援団体として協力する。
加藤良夫構成員
 日本医療法人協会報告書に再発防止策は掲載しないと書いてある。
小田原良治構成員
 再発防止を検討しないとは,一言も言っていない。再発防止については,院内の医療安全管理委員会の方に上げる。そちらから匿名化した上で,再発防止策を医療機能評価機構の方に報告すると前回説明した。
小田原良治構成員
 図5のセンター業務@について,個別の事案が責任追及につながるので,分析した結果の報告は,いろいろな病院に共通の項目だろうから,ポンチ絵の医療機関を複数にしていただきたい。
永井裕之構成員
 私は,広尾病院で妻を医療事故で亡くした遺族。予期せぬ,予期しないというときに,広尾病院の事故について,この前,誰かが,あれは医師法第21条の問題だと答えたと聞いているが,私にとって全く予期しなかったこと。予期しないということだが,患者側にとって説明を受けても,その予期したということが納得できない場合がある。そういうことについても,ちゃんと遺族の思いを真摯に聞く姿勢をもたない限り,この制度が国民から信頼される事故調査制度にならない。「予期しない」というのはどういうことかをもうちょっと拡大的に考えたほうがいい。
加藤良夫構成員
 私は,過誤があろうがなかろうが,予期しなかった死亡は届けるという話を強調した。過誤類型だから届けないとか,そういう判断をその場でするものではない。過誤かどうかわからなくても,過誤があってもなくても,とにかく予期しなかった事故であれば,これは届ける。
小田原良治構成員
 加藤先生の話はそのとおり。私どももそのように説明している。
宮澤潤構成員
 個々の医療事故に関して,その可能性は予期できたのかできなかったのか。それが問題であって,一般的な確率とか,そういう問題ではない。
 単純な過誤は医療事故の調査の対象になってくるものだと思う。
佐藤一樹参考人
 付帯決議2.医療事故調査制度,ア,調査制度の対象となる医療事故が,地域及び医療機関毎に恣意的に解釈されないよう,モデル事業で明らかになった課題を踏まえ,ガイドラインの適切な策定を行うとある。
 医療法人協会のガイドラインの最初に医師法第21条のことが書いてある。これは絶対外せない問題。すなわち,恣意的に医師法第21条で届け出ようといった対応をしている病院がある。例えば,国立国際医療センター。国立国際医療センターのマニュアル,独立行政法人国立病院機構の各国立病院に対するマニュアルは恣意的に解釈されている。異状死体であって,異状死ということは間違っていることをはっきり記載して,正しい報告がされるようにするべき。
永井裕之構成員
 各団体から出ているひとは,代理の人は,代理人。個人で出てきた人は参考人で,参考人はそのときにしゃべったことだけで,その後,発言する権限はない。
宮澤潤構成員
 この異状死との関連ではなく,医療事故調という制度は,そもそも専門家が入って,医療事故に関して適切な対応をしていくというのが本来の制度の目的。これがなくなったらどうなるかというと,もとの制度に戻っていく。もとの制度とは何かというと,医療の内容がはっきりわからないであろう警察の機関が手を入れてくる。そして,民事訴訟という形で,原因の分析とか対応策がない形で進められる。そういうことになってしまうのだということをきちんと頭の中に前提としていれておいていただきたい。(この発言は,将に,この医療事故調査制度がパラダイムシフトして成立したことを全く理解できていない。第3次試案・大綱案当時の意見であり,医療者が法律に疎いものとして,脅しをかけているものである。医療側弁護士とはとても考えられない意見である。)
嘉山孝正代理人
 被害者という言葉は問題。これは理科系の仕事だから,べき論はあり得ない。時代とともに変わって行くものもあるので,その辺はお役所がかなり融通を持って省令を出さないと現場が混乱する。
山本和彦座長
 次回以降は,意見の相違部分を中心に議論する。

おわりに
 医療事故調査制度の施行に係る検討会には,厚労科研費研究(西澤班)中間報告(論点整理)と医法協医療事故調ガイドラインが提出されたが,西澤班の議論は内容的に進捗しておらず,論点を羅列したのみの,将に「論点整理」に過ぎなかった。一方,医法協ガイドラインは完成系であり,論理構成も出来上がっていた。このため,必然的に,医法協ガイドラインがたたき台となったものであり,終始,医法協ガイドラインは攻撃に曝されたと言っても過言ではない。第2回施行に係る検討会も,将に,医法協案を軸に展開した。あらゆる攻撃を論理的に撃破して行ったということである。このように記載すれば,防戦に汲々としたように受け取られるかもしれないが,決してそうではない。厚労省提示案の問題点を指摘し,修正を求め,次々に改善して行ったのである。議論の過程で,施行に係る検討会メンバーにも厚労省にも理解者が増えて行ったというべきであろう。傍聴人からも多くの賛同が得られたのである。都立広尾病院事件遺族をヒーローに仕立てた新聞・テレビの報道は全くの虚偽の物語であり,実質は全く異なっていたというべきであろう。
 この第2回施行に係る検討会で,修正を求めたセンター調査のポンチ絵も重要ポイントである。医療事故の判断に関する相談窓口をセンター独占から支援団体へと拡げたことも,大きな改善点である。センターも法律上複数が予定されているとの主張も厚労省は認めた。その上で,予算の関係上,今回は1カ所を予定しているとの回答であった。現センターが,その任にないようであれば,センターの変更あるいは第2のセンター認定を求めるべきであろう。現センターの運用には問題点が多く,センターへは厳しく監視の目を向けておかねばならない。

*本誌,シリーズ医療事故調査制度とその周辺(6)参照。平成25年5月29日厚労省とりまとめは,不備な内容にもかかわらず,医療法改正に間に合わすために強引なとりまとめが行われた。筆者ら医療法人協会を軸に,医療法改正絶対反対の運動を展開した。




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