鹿市医郷壇

兼題「溜息(ういっ)」


(459) 樋口 一風 選




川内つばめ

   休ん明け書類の山い溜息く吐っ
  (やすんあけ しょるいのやまい ういくちっ)
(唱)遊だ罰じゃろ毎晩残業
  (あすだばっじゃろ めばんざんぎょう)

 何日か有休を取って出社してみると、机の上は書類の山です。
 久し振りの休暇で奥さんや、子供たちの相手で疲れているので、実は会社でゆっくりと疲れを癒そうと思っていたのにがっかりでした。溜息が目に見えるようです。




城山古狸庵

   まだ嫁かん末子れ母あ溜息く吐っ
  (まだいかん しいたれはほあ ういくちっ)
(唱)やいやい言てんしれったんの娘
  (やいやいゆてん しれったんのこ)

 結婚年齢が、高くなったり、独身願望の女性が増えたりで、三〇歳を過ぎても嫁がない娘さんが増えています。
 親御さんにしてみれば気が気ではありません。将来はどうするのだろうと思うと溜息が出ます。




清滝支部 鮫島爺児医

   四人目も男児じゃのして出た溜息
  (よにんめも おとこじゃのして でたういっ)
(唱)恵いかも言て五人目を待っ
  (のさいかもちゅて ごにんめんをまっ)

 子沢山の原因が分かりました。上三人が娘ばっかりで、男の子の跡継ぎが欲しくなります。そこで男の子が生まれるまで頑張っていたのですが、四人目もお嬢さんでした。原句は「四人目は男児 おとこ 願ねごたが出た溜息」でした。
 また女の子が生まれたと、説明してなくてもいい句ですが、中句に助詞が無くて、むずかしい読み方になるので、「男じゃのして」と願いが叶わず残念だと、分かるように変えてみました。



 五客一席 紫南支部 二軒茶屋電停

   分限者ん溜息が聞こゆっ大増税
  (ぶげんしゃん ういっがきこゆっ だいぞぜい)
(唱)稼せっが良かで応えあすいめ
  (かせっがよかで こたえあすいめ)


 五客二席 上町支部 吉野なでしこ

   寒み懐月末の締め出い溜息
  (さみつくら げっまつのしめ でいういっ)
(唱)また今月も帳簿は赤字
  (またこんげっも ちょうぼはあかじ)


 五客三席 清滝支部 鮫島爺児医

   白鵬にまたかの溜息泣っ国技
  (はくほうに またかのういっ なっこくぎ)
(唱)張手かち上げ汚ね相撲 
  (はいてかちあげ きっしゃねすもう)


 五客四席 醤油屋孫一

   今月も気細せか財布い出っ溜息
  (こんげっも きぼせかふぞい でっういっ)
(唱)月末ちなれば諭吉も居らじ
  (げつまちなれば ゆきっもおらじ)


 五客五席 上町支部 吉野なでしこ

   月げっ末まちな通つう帳ちょを開ひれっ溜う息いく吐ちっ
  (げっまちな つうちょをひれっ ういくちっ)
(唱)是こしか無ち言うITM
  (こしこしかねち ゆうあいちえむ)


秀  逸

 紫南支部 二軒茶屋電停
   しゃっくいが止まらじ溜息く吐っ笑るっ
  (しゃっくいが とまらじういく ちっわるっ)

 城山古狸庵
   二死満塁ゅ逃げっ出い溜息
  (つーあうと まんるゅのげっ でいういっ)
   可哀想しこっ五票差で敗けっ溜息く吐ちっ
  (ぐらしこっ ごひゅさでまけっ ういくちっ)

 清滝支部 鮫島爺児医
   教せた山が出たとい×ち溜息
  (いっかせた やまがでたとい ばちういっ)
   稀勢の里溜息く配って横綱が泣ねっ
  (きせのさき ういくくばって つながねっ)
   ミサイルんニュース見っ度出っ溜息
  (みさいるん にゅーすみっかし でっういっ)
   遅れたが汽車も遅れっ吐た溜息
  (おくれがた きしゃもおくれっ ちたういっ)
   大て魚が手元で逃げっ大て溜息
  (ふていおが てもとでにげっ ふてういっ)

 上町支部 吉野なでしこ
   当たい籤組が違ごたち大て溜息
  (あたいくし くんがちごたち ふてういっ)

 川内つばめ
   別嬪に溜息く吐たなあ女房が蹴っ
  (べっぴんに ういくちたなあ かかがけっ)
   宝籤買時の夢は溜息きなっ
  (たからくし ことっのゆめは ういきなっ)

 霧島 木材
   正しょ月がっ明あけ秤ちきい乗いかて溜う息いく吐ちっ
  (しょうがっあけ ちきいのいかて ういくちっ)

 印南 本作
   溜息く吐っ雪が降い日は彼しょ想っ
  (ういくちっ ゆっがふいひは ぬしょおもっ)
   俺い嫁御溜息く吐こそな良か女姓
  (おいよめじょ ういくつこそな よかおなご)
   美男子ん大河ドラマい溜息く吐っ
  (よかにせん たいがどらまい ういくちっ)

 醤油屋孫一
   アラフォーが嫁かじ親達ちゃ溜息く吐っ
  (あらふぉーが いかじおやたちゃ ういくちっ)

今月の郷句から
◎間違いやすい言葉  
 「太て魚(ふていお)」というのがありました。鹿児島弁は「大きい」も「太い」も「ふて」と言います。足は「大い(ふとい)」足首は「太い(ふとい)」で、聞くだけなら、「大きい」「太い」と想像できますが、字にすると違和感があります。気を付けましょう。


薩 摩 郷 句 募 集

◎4 号
題 吟 「 服(ふっ)」
締 切 平成30年3月5日(月)
◎5 号
題 吟 「 カルテ 」
締 切 平成30年4月5日(木)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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