=== 新春随筆 ===

           新 し い 年 の 道 標





鹿児島市保健所長 土井由利子

 鹿児島市医師会の皆様に,謹んで初春のお慶びを申し上げます。
 また,日頃より,鹿児島市保健所の業務にご理解とご協力を賜り,あらためて心より感謝申し上げます。
 昨年の4月に保健所長として鹿児島市に赴任し,早や9カ月が過ぎました。赴任するまでの約25年間は,米国留学の約2年間を含め,公衆衛生分野での研究と保健医療従事者の人材育成(保健所長の養成訓練の研修企画等)に携わってきました。保健所長として,この9カ月を振り返って概括し,新しい年の道標としたいと思います。

1. がん検診
 鹿児島市における主要死因の死亡率を見ますと,男女ともに悪性新生物が1位(表1),部位別に高い順に1〜5位までを見てみますと,男性では,@気管・気管支・肺,A胃,B肝・肝内胆管,C膵臓,D結腸,女性では,@乳房,A気管・気管支・肺,B結腸,C胃,D膵臓という結果でした(表2)。このことから,鹿児島市におきましても,国・県と同様に,がん対策事業は保健所が取り組むべき最優先課題と考えております。
 保健所では,国のマニュアルをもとに,受診率向上のためのコール・リコール,精検受診率の向上のための精検未受診者への受診勧奨を行い(3,5カ月後の文書送付,6カ月後の電話連絡),個別検診機関への精度管理項目遵守のお願いなどを行っているところです。鹿児島市医師会の皆様におかれましては,今後とも引き続き,がん対策事業へのご理解・ご協力を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。




2. 結核
 日本における平成28年の結核罹患率は13.9(人口10万対)であり,低蔓延国の水準である10以下までには至っていません。過去5年間における鹿児島市の罹患率も同様の傾向で(平成28年は13.5),年により多少の変動はあるものの,その多くは65歳以上の高齢者でした(表3)。医療機関は,高齢者等の結核罹患率が高い人と病気等で免疫力が低下した人が集まるため結核感染が発生しやすい場所です。結核は感染性飛沫による空気感染ですが,気管支鏡検査,気管内挿管,気管切開,ネブライザー,痰の吸引,胃管の挿管等といった医学的処置により咳が誘発され,感染のリスクが増大します。常に結核を念頭に置いた院内感染対策を講じ,全職員に定期健康診断を確実に実施するとともに,ベースラインデータとしてのIGRA実施が推奨されています。また,長期入院患者に対しては,全身管理の一環として年1回の胸部エックス線検査の実施が重要です。
 結核患者(疑い例や死亡例も含め)が発生した場合には,直ちに保健所に届出を提出していただくとともに,感染症法および医療法に基づく保健所の対応に速やかにご協力をお願いしたいと思います。



3. 災害時対応
 災害時対応につきましては,計画・マニュアルの作成・訓練とともに,関係者間の顔の見える関係の重要性を強く感じているところです。12月6日には,鹿児島市医師会主催の「広域災害救急医療情報システム(EMIS)入力説明会」のご案内をいただき,保健所の医務薬務担当者に参加してもらいました。また,同日の夜には,鹿児島県医師会主催の「第1回災害医療講習会」があり,私を含め保健所・保健センターの職員数名が参加させていただきました。このほかに,保健所では,災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)の養成研修[基礎編:公衆衛生協会主催]と[高度編:国立保健医療科学院主催]に職員を派遣しています。
 市の災害対策本部,災害派遣医療チーム(DMAT),日本医師会災害医療チーム(JMAT),災害派遣精神医療チーム(DPAT)等の連携の中で,非常時での計画・マニュアル通りには行かない部分を乗り越えて行くための“顔の見える関係づくり”に保健所も積極的に関与して行きたいと考えています。

4. 政令市型保健所と社会医学系専門医制度
 全国に481カ所の保健所が設置されていますが(平成29年4月1日現在),定められている法律により,大きく“都道府県型”の保健所(363カ所)と“政令市型”の保健所(指定都市41カ所,中核市48カ所,その他の政令市6カ所,特別区23カ所)があり,鹿児島市保健所は中核市型保健所に含まれます。中核市の中では,人口規模で言いますと,鹿児島市(約59.8万人)は船橋市(約63.2万人)に次ぐ大きさです。
 政令市型の保健所は,都道府県型の保健所が行う専門的(医事・薬事・生活衛生や精神・難病対策等)および広域的(食品衛生や感染症等)な業務に加え,保健センター等とともに,市区町村の業務とされる母子保健事業(乳幼児健診等),生活習慣病対策(特定健診・特定保健指導等),がん対策等の住民に身近な直接的な事業を行います。加えて,本庁業務としての企画調整・予算関係・条例制定等の業務を担います。さらに,健康危機管理業務(不特定多数の国民に健康被害が発生または拡大する可能性がある場合の防止・準備・対応・復旧)も求められるようになりました。
 このように,量的・質的に保健所業務が増大する中,公衆衛生医師の社会医学分野における専門性の向上が必須であることから,2017年度より,社会医学系専門医制度がスタートしました。社会医学系専門医協会から認定を受けた社会医学系専門医研修プログラムは全国に63ありますが(2017年11月19日時点),鹿児島市保健所の場合,県の研修連携施設として認められていないため,社会医学系専門医の資格取得を希望する医師に研修の機会を提供することができない状況です。専門性の向上とともに人材確保という意味からも何とか解決策が見出せないものかと思う次第です。

5. おはら祭とボランティア
 おはら祭は,昭和24年,戦禍からの復興を願う市民とともに鹿児島市が市制制定60周年を記念して始めたものだと聞きました。11月3日は,保健センターのボランティアの皆さんと一緒に踊り,「観る」より「参加する」ことの楽しさを実感しました。今年も,ボランティアの皆さんの健康づくり推進活動を支援するとともに,一緒におはら祭に参加したいと思います。





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