=== 新春随筆 ===

           明治維新のふるさとから





鹿児島市消防局長  中薗 正人

(はじめに)
 平成30年の輝かしい新春を迎え,鹿児島市医師会の皆様方に謹んで新年のお慶びを申し上げます。また,常日頃から本市の救急業務をはじめとする市政の各面にわたり,ご理解とご協力をいただいておりますことにつきまして衷心より感謝申し上げます。
 本年も本市消防行政につきまして引き続きご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

(明治維新150年)
 今年は,慶応から明治に元号が変わり150年を迎えます。大政奉還,王政復古,それに続く薩摩藩,長州藩両藩を中心とした新政府の樹立で日本の近代化が急速に進められることとなった歴史の大きな転換点です。
 そこで,明治維新150年に関する本市のこれまで,そしてこれからの取組を紹介いたします。本市では「明治維新という郷土の先人たちが成し遂げた偉業から様々なことを学び,その意義や歴史資源としての魅力を現代に生かすことで,150年前の近代日本幕開けの原動力となった進取の精神で,新しい未来を切り拓き,市民一人一人が郷土への誇りと愛着を持ち,全国に誇れる“維新のふるさと鹿児島市”を目指す。」こととしております。
(ロゴマーク)
(薩摩観光維新隊)
 150年の節目を迎えるに当たって平成24年度から30年度までの間に,「明治維新150年カウントダウン事業」として,明治維新までの激動の時代を歩んできた薩摩藩の足跡を振り返るイベントなど様々な取組を実施しています。
 これまで「生麦事件」をテーマとした講演会や「薩英戦争探訪バスツアー」,「札幌市・鹿児島市歴史交流シンポジウム」,「薩摩維新ふるさと博」,「薩英文化祭」等を実施し,多くの市民,観光客の皆様に明治維新150年に関心を持っていただき,鹿児島の歴史や偉人の活躍をPRしたところです。
 また,市民の郷土愛を育むとともに,薩摩藩英国留学生に関する学習や兄弟都市の鶴岡市との交流等を通じて次世代を担う青少年の育成を図り,観光振興は勿論のこと関係特産品の開発や地域イベントの実施など地域経済の活性化に繋がる取組も行っております。
 さらに昨年4月には観光交流局に「明治維新150年・西郷どん推進室」を設置し,事業の企画,推進を行い,ホームページやSNSによる情報発信にも努めています。
 平成29年度は「薩摩維新ふるさと博」等の他に「明治維新コレクション」と銘打って,明治維新ゆかりの地などを巡る「明コレまち歩き」,かごっまふるさと屋台村での「秋の大収穫祭」,「アミュランからながめる明治維新」等のイベント開催,加えて山形屋,アミュプラザ鹿児島,Maruya gardensの店舗による「維新食めぐり」,「明治維新人物名鑑スタンプラリー」,「クイズ大会 西郷王決定戦」を実施し,機運を盛り上げています。

(大河ドラマ「西郷どん」)
 今年のNHKの大河ドラマ「西郷どん」が1月7日から始まり,平成20年の「篤姫」に続き鹿児島のPRや観光振興などに大きな期待が寄せられています。
 1月13日には,維新の英傑を多く輩出した加治屋町の市立病院跡地に,「西郷どん 大河ドラマ館」がオープンし,平成31年1月14日までの間,西郷家・大久保家をイメージした撮影セットの一部再現や,鹿児島ロケのメイキング映像の上映,プロジェクションマッピングを活用したクイズコーナー,ドラマで実際に使用された小道具や衣装の展示など,大河ドラマの世界観を体験できます。NHKの協力を得て展示内容なども更新され,何度でも楽しめる施設になると聞いていますので,全国から観光客が訪れ,「篤姫館」の約67万人の入場者を上回ることを願っています。
 高見橋の大久保利通銅像の向かい側から高麗橋までの甲突川左岸には歴史ロード“維新ふるさとの道”となっていますが,その先から大河ドラマ館の前までを新たに“維新ドラマの道”として整備しております。これは鹿児島県と鹿児島市が共同で幕末・維新期の薩摩の英傑たちの歴史ドラマを屋外型モニュメントと映像で紹介する観光スポットを創出するものです。歴史的出来事を描いた7基の屋外型モニュメント等の設置は県において実施し,市はモニュメントに個人端末をかざして見ると画面に歴史ドラマが流れるアプリケーションソフトを製作しました。モニュメントにスマートフォンやタブレットなどをかざすと,モニュメントのイラストが動き出し関連した映像を見ることができるものです。
 歴史ドラマとして「島津斉彬と集成館事業」「大山巌と薩英戦争」「薩摩藩英国留学生」「五代友厚とパリ万博」「西郷隆盛と岩倉視察団」「西郷隆盛と西南戦争」「東郷平八郎・山本権兵衛と日露戦争」があり,年代順に楽しめるようになっています。
 最近の技術を使った幕末から明治のドラマを通じて,多くの方々に鹿児島の歴史を知ってもらうとともに,歴史ロードが延長され,大河ドラマ館,維新ふるさと館,西郷誕生の地などとあいまって,維新のふるさと加治屋町一帯が一層魅力のある観光地として注目を浴びるものと確信しています。
(歴史ドラマ アプリケーションソフト)

(情報発信と交流人口の増加)
 明治維新が実現したのには世界やアジアの状況の中で大きな流れがありましたが,一方で薩摩藩における「人材育成」と「情報活用」という大きな要素があったと思われます。薩英戦争や英国留学生派遣などを経て世界の状況をいち早く把握していた薩摩藩は攘夷から方向転換し,近代化を進め,卓越した力で歴史的変革を成し遂げました。
 今の時代は,情報の入手とともに,それを生かし如何に効果的に情報を発信し人々を引き付け,成果を挙げるかということが,どんな業種,企業,団体でも大きな課題となっています。
 観光のPRではネットの活用が一般的になってきましたが,昨年流行語にもなった「インスタ映え」する個人が撮影した写真や別府市が作った温泉PR動画など,世界中の人々が簡単に見られる手法は非常に有効なものです。
 また,映画やテレビ番組のように広く,場合によっては世界にも発信されるもののインパクトは大きな効果があります。昨年は「007は二度死ぬ」のロケ地の坊津に映画公開50年を記念して世界各地からファンが訪れました。
 桜島の大正大噴火の年に,これにヒントを得た映画がハリウッドで作られたことはあまり知られていませんが,無声映画の時代に大スターとなり,その後1958年のアカデミー賞作品賞「戦場にかける橋」で助演男優賞候補となった早川雪洲が1914年に出演した「神々の怒り(火の海)」という映画がありました。神を汚したため呪われた日本人の女性が,結婚すると神々が怒り大噴火が起こると言われている中で,難破した船に乗っていたアメリカ人男性と恋に落ち,神の怒りで桜島が大噴火をするという内容で,今であれば,多くの映画ファンが桜島を訪れるものと思われます。
 いずれにしても,どのような情報をどんな手段で誰に向けて発信するか,観光客誘致は「ふるさと納税」と同様に競争の時代になっているのは確かです。

 今回の大河ドラマでは,西郷さんが島流しにされた奄美大島や沖永良部,その他西郷さんに縁のある地域においても様々な取組が行われると聞いています。
 この機会に大いに鹿児島を宣伝し,地域や経済の活性化につなげることは勿論ですが,一過性のものとしないためには,多数の魅力あるテーマの創出,ホスピタリティの充実,官民連携・地域連携などでリピーターを増やす取組が必要ではないかと考えます。
 鹿児島には世界産業遺産,世界自然遺産の屋久島,それを目指している奄美諸島,温泉,食など数えきれないほどの観光資源がありますが,その連携や地域に独特な文化体験などさらなる付加価値をつけるなど工夫することも重要です。浴衣を着て六月灯に行く,鹿児島特産の料理を作り,食べる体験をする,「シティビュー」(バス)と「かごりん」(自転車)で観光ルートを巡るなど,様々な活動に誘引することにより鹿児島の歴史・地域文化理解と観光振興の相乗効果が得られます。

(マイアミ港とマイアミ市街地)

 一昨年,本市訪問団の一員として姉妹都市のマイアミ市へ行ったときに協議をした世界規模のクルーズ会社は,5千人乗りの大型クルーズ船がアジア各国から,特に中国から毎日でも帰港できる日本の港を探しており,鹿児島も調査済みで,大型船の停泊が課題だと指摘をしていました。また,マイアミ国際空港の管理会社は,アジアからの観光客を誘致するために,アジアで一番マイアミに近い羽田空港か成田空港からの直行便について日本の航空会社と協議中とのことでした。
 世界的な観光地のマイアミでも日本は注目されており,「Cool Japan」と言われ食をはじめとする日本の文化が脚光を浴びる今が,地方にとっても大きなチャンスであることは間違いありません。
 観光の究極の目的は「平和」だという知人がおりましたが,実際に体験し,その地域の人と触れ合うことで相互理解が進むとともに交流の輪が広がり,また,誤解や争いの解消に繋がることにもなるのではないかと思います。
 人口減少が進む中,外国人観光客8人の消費額が日本人1人分に相当するという調査もあり,交流人口の増加は鹿児島にとって大きな目標になっています。今年はそれに向かって大きく飛躍できるのでないかと期待しています。

(おわりに)
 このように今年は鹿児島市にとって大きな追い風が吹いていますが,本市消防が発足して70周年でもあります。長い歴史の中で市民の安心安全を守ってきた先達に敬意を表するとともに,市医師会や関係機関の皆様のご協力,ご支援に改めて感謝申し上げます。
 本年も大きな災害,事故がないことを願い,また,鹿児島市医師会の益々のご発展と皆様方のご活躍,ご健勝を祈念申し上げます。




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