=== 新春随筆 ===

             母の愛とポトスと私




 鹿児島県言語聴覚士会 会員
(公益財団法人東風会三船病院リハビリテーション科言語聴覚士)  上村 智子

 このポトスとの出会いは,私がまだ専門学生だった頃,臨床実習の為引っ越したアパートの近くの花屋さんでした。一緒に来ていた母親が殺伐としたアパートの部屋に少し緑があればと私に買ってくれたのです。私は明日から始まる実習に向けて緊張感が高まっている中そのポトスを眺めながら「絶対に水をあげる余裕なんてないだろう」と考えていました。案の定,実習が終わる頃には部屋の片隅で今にも枯れそうな変わり果てた姿になっていたのです。私は枯れてしまったポトスと私の為に買ってくれた母親に対し申し訳ない気持ちになりながらポトスを実家の自分の部屋へと持って帰りました。
 葉は数枚茎の部分も黄色く変色しており今にも息絶えてしまいそうなポトスを自分の部屋で眺めながら育てなおすことを決意しました。一番日当たりの良い場所へ置いてみたり栄養剤を与えてみたりと色々試し少しは茎の色が緑色へ変わり,萎れた葉っぱにも少しツヤが出始めました。「おっ!これは復活する見込みがある」と確信したのは束の間,また直ぐに元気がなくなってしまったのです。私は「もうだめだ」とこのポトスにお別れを告げることを決意しました。
 数カ月後母親の職場へと遊びに行った時,生き生きとしたポトスらしい植物が部屋に飾ってあるのを見つけました。私が「これポトスじゃない?どうしたの?」と母親へ問うと「あんたが枯らして捨てたポトスだよ。こんなに元気になったよ」と答えたのです。私は驚いたと同時にとても感動しました。私の部屋では育たなかったのにどうしてこんなに大きく育ったのか不思議でなりませんでした。
 就職すると同時に私は実家を出て市内へと引っ越すことになりました。その時母は元気になったポトスを「あんたのところへ持って行きなさい。」と再び手渡してくれたのです。今度は絶対に枯らすまいと母から受け取りました。しかし,就職1年目日々の生活に追われる中再びそのポトスは元気がなくなりかけていました。母親が私の家へ遊びに来た時そのポトスを見て「あんた,また枯らす気ね。」と言いました。そしてその後母は「お母さんはね,このポトスの成長があんたの言語聴覚士としての成長のように感じているのだよ。」と続けたのです。私はこの時初めて母がこのポトスに私の言語聴覚士としての成長を重ねていたことを知りました。私はその日以来このポトスを眺めながら自分の成長について考えるようになりました。
 言語聴覚士として働き始めてからの月日,臨床の現場で出会う患者さんは自分が想像していた以上に訓練が難しく自分の言語聴覚士としての知識やスキルの低さ,社会人としての未熟さ色々なことで思い悩む日が多くあります。そんな中何度も枯れそうになりながらも持ちこたえ逞しい成長を遂げているポトスを見て「負けてたまるか!」という気持ちに何度もさせられました。
 鉢に収まらなくなってきたポトスは,今年の5月大きな鉢へと植え替えることにしました。またそこからの成長はすさまじく私は今このポトスを「お化けポトス」と改名しました。
 お化けポトスへと進化したポトスは今もなおとどまることなく成長し続けています。私も言語聴覚士としてこのポトスが教えてくれたようにどんな困難にもめげずにまっすぐと成長し続けようと思っています。

  
鉢へ植え替えた時のポトス
5カ月後のお化けポトス




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