=== 新春随筆 ===

シリーズ医療事故調査制度とその周辺(11)

−医療事故の定義をめぐる攻防,ポンチ絵の変遷−




 中央区・清滝支部
(小田原病院)  小田原 良治

 厚労省医政局長の私的検討会として設置された「医療事故調査制度の施行に係る検討会」(以下「施行に係る検討会」という)で医療事故調査制度の骨格が議論された。2015年(平成27年)3月20日の「施行に係る検討会」とりまとめ「医療事故調査制度の施行に係る検討について」がそのまま省令・告示・通知となり,医療事故調査制度が施行されることとなる。この「施行に係る検討会」の議論に多くの答えが含まれているので議事録を要約して記載したいが,その前に,この議論での最重要部分である,医療法第6条の10医療事故の定義についての部分と,医療法第6条の16医療事故調査・支援センター(以下センターという)業務の部分について添付されたポンチ絵を基に,厚労省担当者との綱引きの概要を記しておきたい。また,センターと支援団体の役割分担についても重要な修正があったので,この稿で記載しておく。
 医療事故の定義部分は,医療事故調査制度の根幹部分であり,ポンチ絵が全貌を表している。前稿(本シリーズ(9),(10))の日本医療法人協会医療事故調ガイドライン(現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会最終報告)と本稿のポンチ絵の推移を念頭に次回以後の施行に係る検討会議事録概要をお読みいただきたい。
 まず,センター業務の修正部分及びセンターと支援団体の役割部分の修正につき述べた後に,最重要課題である医療事故の定義の推移につき詳述したい。

T)センター業務について
 図1は第3回施行に係る検討会に厚労省から提出された資料である。医療法第6条の16,センター業務について,第2回施行に係る検討会に厚労省案として提示されたポンチ絵が左(旧)であり,第2回施行に係る検討会に於いて,筆者が図右(新)の如く修正を求めたものである。第3回施行に係る検討会の議を経て,図1右(新)のように修正された。
 法律の条文は図1法律の項にあるように右図(新)を表す記載となっているが,誤解を招かぬようにポンチ絵の修正を行ったものである。法律がポンチ絵右(新)の如くなっていることは疑いようのないことであるにも関わらず,今日でも,センターが図1左(旧)ポンチ絵の如く誤解しているか,恣意的変更を目論んでいる節がある。敢えて,若干説明を加えておきたい。
 医療法第6条の16は,「医療事故調査・支援センターは,次に掲げる業務を行うものとする。」とされており,第1号でセンター報告により収集した情報の整理及び分析を行うこととしている。即ち,図1右(新)ポンチ絵の左側にある複数の病院からの報告を収集し,情報を整理,類別化して分析を行うことが第一の業務である。さらに,これを受けて,第2号で,センター報告をした病院等の管理者に対し,1号業務で行った情報の整理,分析の結果についての報告を行うというものである。即ち,報告された事例を匿名化・一般化し,データベース化,類型化するなどして類似事例を集積し,共通点・類似点を調べ,医療機関の体制・規模等に配慮した再発防止策を検討し,その結果を図1右(新)ポンチ絵の右側部分のセンター報告をしてくれた複数の医療機関にフィードバックするという仕組みである。個別の事例の中身を分析し,何があったのかを調べるものではない。図1ポンチ絵左(旧)を見ると,個別の事例の中身を分析し,何があったかを当該病院に報告する責任追及の構図と誤解されかねない。このため,敢えてポンチ絵の修正を求めたものである。この修正により,センター業務に対する誤解の解消及びセンターによる恣意的運用の防止につながった。このようにセンター業務は,個別事例の分析ではないことは明白であるにもかかわらず,前述したように,未だに,個別事例に介入し,責任追及につなげようとする動きがあることは,極めて残念なことと言うべきであろう。厳重な監視が必要である。

図 1 センター業務ポンチ絵の推移(第3回施行に係る検討会資料)

U)支援団体とセンターの役割分担
 支援団体とセンターの役割分担についても一言触れておかねばならない。厚労省提示案は図2上であり,修正後が図2下である。厚労省案では,「医療事故の判断など制度全般に関する相談」がセンターのみの業務とされていた。センターにはセンター調査の権限が与えられている。センターが,医療事故か否かの判断について相談を受け,なお且つ,センター調査の権限を行使することは利益相反の可能性がある。相談業務は支援団体が行うべきであると主張したのである。結局,第3回施行に係る検討会において,図2下の如く,支援センター,支援団体ともに相談業務ができることとなった。支援団体が相談業務を行えるようになったのは大きな前進である。制度の本質を考えれば,医療事故か否かの判断についての支援は支援センターではなく,支援団体が行うべきものである。ところが,実際は,多数の相談が支援センターに寄せられているという。センターがセンターへの相談を勧めるとともにセンター報告を勧めるという利益相反業務を行っていることになる。医療事故調査制度を理解すれば,センターに相談が集まるはずがない。多数の相談がセンターに持ち込まれているということは,如何に現場が,未だに,医療事故調査制度を理解していないかということであろう。
 ここにいう「相談」業務は,今回,鹿児島市医師会サポートセンターが,会員の「相談」を受けるのとは若干ニュアンスが異なる。鹿児島市医師会サポートセンターの相談業務は,支援団体・センターへの相談業務以前の相談相手として会員に寄り添う形での相談窓口と理解していただきたい。

図 2 支援団体とセンターの役割分担を修正(相談業務を支援団体へ拡充)

V)医療事故の定義について
 「医療事故の定義」部分が医療事故調査制度の核心部分であり,施行に係る検討会の天王山であるので,経緯を詳述したい。
(1)医療事故の定義ポンチ絵の推移
 施行に係る検討会の議論では,幸いにして,筆者が主導権をとることができた。たたき台となった日本医療法人協会医療事故調ガイドラインが注目を浴びたからである。注目を浴びるということは,あらゆる方角からの集中砲火を受けることでもあったが,反面,厚労省担当部局と詳細に事前協議をすることともなったのである。厚労省担当者は,医療事故を専門に取り扱う弁護士集団を柱とする団体から強い圧力を受けていた。同情の余地はあるが,それを承知でのぎりぎりの攻防を行った。医療事故の定義はこの制度の根幹部分であり,基礎知識として必須の事項である。
 事前配布の未定稿資料として厚労省が提示した資料の医療事故の定義部分が図3である。上部枠内のポンチ絵を見ていただきたい。これは,法の趣旨(「医療に起因し,または起因すると疑われる死亡又は死産」であって,(かつ)当該管理者が「当該死亡または死産を予期しなかったもの」)を正しく反映していない。筆者は,厚労省担当者に修正を求めた。2014年(平成26年)11月25日,(第2回施行に係る検討会の前日)他の修正事項とともに厚労省に送ったものが図4である。ポンチ絵部分は手書きで修正図をFaxで送り,その後,上京した。ホテルにチェックインした途端に厚労省から電話が入った。筆者が提示した多くの部分が修正されたが,ポンチ絵部分はそのままで修正されなかった。このため,筆者は厚労省に飛んで行った。もう外は暗くなっていた。厚労省は翌日の検討会の準備で,多くの職員が残業をしていた。既に,翌日の資料作成のために印刷機は回っていたのである。田上喜之補佐が残業していた。田上喜之補佐にポンチ絵の修正を強く求めた。事の重要性を認識した田上喜之補佐が,「輪転機は回したか?」と大声を出した。「はい。回ってます」という返事。「止めろ,止めろ,止めろ」。このようにして,翌日の配布資料を印刷中であった輪転機は止まった。田上喜之補佐は,とりあえず印刷機を止め,上司と協議して連絡するとのことであったので,厚労省を辞去し,ホテルに帰った。後刻,電話が入った。翌日の検討会では,ポンチ絵は提示しないとのことであった。翌日,検討会に出された資料が図5である。ポンチ絵は果たして削除されていた。
 しかし,この問題は解決された訳ではない。筆者が提示したポンチ絵は採用されていないのである。手書きの図をパワーポイントで作り直した(図6)。大坪寛子医療安全推進室長では,埒があかないと考え,この図6を持って,12月2日,法令系上司である土生栄二総務課長に直談判に行ったのである。
 筆者と井上清成顧問弁護士と厚労省に出向き,土生栄二総務課長,田上喜之補佐と面談,図6のポンチ絵を提示したところ,医療法で規定している医療事故の定義の解釈は図6の通りであることをあっさりと認めてくれたのである。これで,医療事故調査制度の根幹である医療事故の定義が筆者らの主張通り進むこととなった。第4回施行に係る検討会で厚労省は,医療事故の定義図として,図7を提示した。これが,施行に係る検討会の結論としての「医療事故の定義」となるのである。筆者らの主張(図6)と確定した厚労省提示医療事故の範囲図(図7),さらには当初厚労省ポンチ絵(図3)を比較したものが,図8の色分けである。筆者らが提示した医療事故の定義(図8左下)は,第4回施行に係る検討会厚労省提示医療事故の範囲図(図8上)と同じであり,全部の色がそろっている。ところが,当初の厚労省ポンチ絵(図8右下)を第4回施行に係る検討会厚労省提示医療事故の範囲図(図8上)と比較すると,赤色部分,即ち,「医療に起因せず,予期しなかった死亡」(報告対象外の事例)部分が含まれていないのである。これでは,不当に報告対象が拡がることとなる。医療事故の定義図は,これほど重要な部分だったのである。また,医療事故の定義に筆者らの主張が取り入れられたことで,医療事故調査制度の大半は解決した。第4回施行に係る検討会で医療事故の定義が確定したことにより,筆者はとりまとめへと舵を切った。

図 3 「医療事故の定義」厚労省原案ポンチ絵(第2回施行に係る検討会事前打ち合わせ資料)

図 4 「医療事故の定義」厚労省への筆者回答(手書きポンチ絵)(事前打ち合わせ資料)

図 5 「医療事故の定義」第2回施行に係る検討会提示厚労省資料(ポンチ絵を削除)

図 6 「医療事故の定義」厚労省総務課長へ筆者提示ポンチ絵(事前打ち合わせ資料)

図 7 第4回施行に係る検討会提示厚労省資料(医療事故の定義図)

図 8 医療事故の定義ポンチ絵比較

(2)予期しなかった死亡要件について
 医療事故の定義の大枠は前述のごとく,目途がついた。続いて,医療事故の定義の2つの要件について述べたい。図9は,予期しなかった死亡要件に関する第4回施行に係る検討会での厚労省提示省令案である。厚労省から省令部分の赤字部分が提示された。この案文は筆者に事前に提示されたが,筆者に異存はなかった。厚労省内では,当初1号要件と2号要件のみであったが,3号要件が必要であろうということで追加されたようである。筆者が見た時点では,既に3号要件までそろっていた。このため,その場で,異議ないことを即答した。「予期しなかった」ということについて,省令で縛りがかけられた形ではあるが,考え方によれば,「予期しなかった死亡」につき,事前に要件を整えることにより,予防が可能である。この制度の事前理解が1丁目1番地であるという筆者の主張はこのことである。最終的には図10の如く,「予期しなかった死亡」につき,省令・通知事項が決定された。

図 9 医療事故の定義省令案(第4回施行に係る検討会厚労省提示,赤字は未確定部分)

図10 医療事故の定義(予期しなかった死亡)省令・通知(確定版)

(3)医療起因性要件の推移
 医療起因性の考え方として,2015年(平成27年)1月14日開催の第4回施行に係る検討会に西澤構成員提出資料として図11が提出された。第4回施行に係る検討会は,「医療事故の定義」と「予期しなかった死亡」要件(省令事項)が主戦場であった。この2つの大きなテーマに目途をつけた後,厚労省と「医療起因性」要件(通知事項)について詰めに入った。2015年(平成27年)1月28日の厚労省提示案が図12(削除部分を明示し,筆者が厚労省に返信したもので,吹き出し部分は今回追加した)である。西澤構成員提出資料からすると大きな進歩である。実質的には,日本医療法人協会修正案(図14)を基に協議を行ったのである。詰めの段階に入っていたが,「管理者が医療上の管理に起因し・・・」との案文を「管理者が医療に起因し・・・」と修正を求めた。また,「院内感染の予防策に関連するもの」の記載の削除を求めた。実は,もう1点,「診察」の削除を求めたのである。「単なる診察で死亡するということなどあり得ない」と主張した。当然である。聴診器を当てている最中に死亡することが,仮にあるとしても,聴診器を当てたことが死因になるということなどありえない。一旦,厚労省は診察の削除に同意した。しかし,その後,連絡が入った。医療法の他の部分に,医療とは,「診察」「検査」「治療」との記載があるという。ここで,診察を削除すると法文上の整合性を欠くことになるので「診察」の削除は難しいとのことであった。このため,やむを得ず,「診察」を残すことに合意。替わりに,医療法上の整合性のために「診察」が入っただけであることを明確にしてくれるように要求した。その結果,それまで「下記の『医療』に起因し,又は起因すると疑われる死亡又は死産」との記載であったものを,「『医療』(下記に示したもの)に起因し,または起因すると疑われる死亡又は死産」と修正することとなった。この意味するところは,「下記に示したものは,単に『医療』のリストである。『医療』に起因する死亡があった場合に医療起因性があるということなので,実質的には,『診察』に起因する死亡はない」ということである。下記が医療法上の「医療」の単なるリストであることは,第6回施行に係る検討会の席上,大坪寛子医療安全推進室長が,約束どおり明言した。結局,第5回施行に係る検討会に提示されたものは図13であり,「医療起因性の該当性は,疾患や医療機関における医療提供体制の特性・専門性により異なる」旨の個別性重視が明記された。図13は法文の関係上,名を捨てて,実を取ったものであることを理解いただき,運用で適切に対処していただきたい(詳細は本誌第55巻1号,2016参照)。
 因みに,理解のために,筆者らが厚労省及び西澤班に提示した案を図14に示す。※3部分は原則,医療起因性はないので,右枠内としたものであるが,他団体との関係上,左枠内に入れるということで厚労省と合意した。
 医療起因性理解には,筆者らが提案した図14を念頭に置き,※3の内,特に管理者が医療と一体と判断した場合には,医療起因性ありとするということと考えてほしい。図14の医法協案が最も理解し易いと思う。
図11 第4回施行に係る検討会 西澤構成員提出「医療に起因する死亡」(案)

図12 厚労省提示事前打ち合わせ資料筆者回答(筆者削除要望部分を示す)

図13 施行に係る検討会提示「医療に起因する死亡」別紙(筆者意見により修正したもの)

図14 2015年1月9日日本医療法人協会「医療に起因する死亡」案(厚労省,西澤班に提示)

(4)決着した医療事故の定義
 図7が決着した医療事故の定義であり,報告すべき医療事故は,「医療に起因した死亡であり,なお且つ,予期しなかった死亡」である。右下に記載されている,「※過誤の有無は問わない」の一文が重要である。この「予期しなかった死亡」要件が図10であり,「医療に起因した死亡」要件参考図が図13である。医療事故の定義の詳細については,本誌55巻1号(2016)及び55巻2号(2016)を参照いただきたい。
 「過誤の有無は問わない」について,ひと言述べておきたい。「過誤の有無は問わない」は,今回の制度の出発点である。今回の定義の医療事故(医療起因性要件と予期しなかった死亡要件のいずれをも満たすもの)に該当するものは,過誤の有無に関係なく,センターに報告する必要があり,逆に,今回の定義の医療事故に該当しないものは,過誤の有無に関係なく,報告の必要はない。今回の制度理解の根底にあるのが,この「過誤の有無を問わない」である。ところが,この重要な一文が,明文として存在するのは,この図7の右下の記載のみである。今回の制度は,過誤と切り離すことによって,初めて理解できるのであって,パラダイムシフトできていない人々が混乱しているのは,過誤と切り離して理解できていないからである。ずっと沈黙を保っていた筆者が図3のまぼろしの厚労省ポンチ絵を公表したのは,「※過誤の有無は問わない」をマスクしたスライド(図15)が出回ったからである。これについては,改めて記載したい。
図15 日医,厚生局研修会スライド(「※過誤の有無は問わない」が消されている)

(5)「医療に起因する死亡又は死産の考え方」経緯の追記
 医療事故の定義について,「予期しなかった死亡要件」(省令・通知事項),と「医療起因性要件」(通知事項)について,筆者らと厚労省との攻防について記して来た。結果的に,別紙参照資料として整理された「『医療に起因する(疑いを含む)』死亡又は死産の考え方」の経緯につき,記載しておきたい。これまで,厚労省とのやり取りを記載したが,実は,それ以前に医療側の問題があった。第4回施行に係る検討会に西澤構成員提出資料として,西澤班提示案が提示されたのであるが,この部分の施行に係る検討会議事録要約と関連する経過を記載しておきたい(西澤班は秘密会として開催されていたことを念頭において,お読みいただきたい)。
第4回医療事故調査制度の施行に係る検討会議事一部要約
西澤寛俊構成員

 「医療に起因し,又は起因すると疑われるもの」の範囲について,西澤班で議論を継続している資料を提出した。図11の左側の点線で囲んだ部分に「提供した医療」の考え方を整理した。右側の点線で囲んだ部分には,管理者が判断するに当たっての一助として,死亡または死産の要件を網羅的に整理することを現在,検討中なので,ここに記載した。あくまでも参考として記載した。「療養に関連するもの」は医療に該当すると明記した方がいいという意見で「その他」のところに記載した。右側の「@に含まれない死亡又は死産(A)」は医療に含まれない。下のグレーボックスは@にもAにも該当し得るもので,管理者に判断が求められる。欄外にあるように,疾患や,医療機関における医療提供体制の特性・専門性について考慮することが必要である。
小田原良治構成員
 西澤班で検討中との紹介であり,西澤構成員の個人的意見として伺った。この図11は,確かに日本医療法人協会の方にも送られてきたが,1月8日午後9時にメールで送られて来たものであり(すでに職員は帰宅後にて不在),1月9日の当協会の医療安全調査部会で検討された。ただ,当協会の了解もなく,同日,厚労省に提出されているので,施行に係る検討会提出資料としては不完全な状態での提出である。これは,運用レベルの話であって,今日,この場の議論ではないと思うが,当協会も既に検討しているものであり,下のグレー部分は医療から外れると認識している。
山本和彦座長
 この通知の中身として議論する話ではないという意見か?
小田原良治構成員
 通知ではなく,実際の細かい,どれを対象とするかという問題であるということが1点。もう1点は,西澤班提出ということになっているが,西澤班でまだ今後検討余地があって,日本医療法人協会も次回西澤班に意見を提出することになっているので,ここで話が決まってから後の話であろう(現時点では,西澤班としての提案ではなく,西澤寛俊構成員個人の提案書というべきである)。
高宮眞樹構成員
 12月24日に,今日,西澤構成員提出資料が西澤班で議論されたとき,小田原構成員は参加していなかったようであるが,日本医療法人協会からも研究協力員として参加しているはずで,12月24日の会議のこの案は,当然,小田原構成員に連絡が行っていると思うが。
小田原良治構成員
 西澤班には伊藤常務が出席しているが,この12月24日の会議は欠席であったようだ。私がこの話を聞いたのは1月8日であり,西澤班(事務局は全日病)からメールが入ったのは同日,夜9時である。それで,翌,9日に医療安全調査部会で検討,これはちょっと違うのではないかということで,修正案をまとめた。日本医療法人協会修正案は次回西澤班に出るはずである。西澤構成員提出の表は,1月8日の夜9時に出来上がった書類であり,合意文書とは言えないということだ。
このやりとりの整理
 2014年(平成26年)12月24日,西澤班会議が開催されている。上記,議事録のとおり,当協会の伊藤常務理事は,この日,欠席であったようだ。ここで,「『医療に起因する(疑いを含む)』死亡又は死産の考え方(案)」が議論されたようである。ただ,この時の表は,高宮構成員が言ったような,第4回施行に係る検討会に提出された資料(図11)ではない。この時の資料は,図16である。この日の議論で結論が出ず,さらに検討後,案を作成し,各委員の了解を求める手筈になっていたものである。しかしながら,上記議事録に記したように,資料が出来上がり,当協会にメールで送られてきたのは,2015年(平成27年)1月8日21時のことである。筆者は1月8日夕刻より,厚労省と事前打ち合わせを行っており,そこでこの図を目にし,これには同意できないと述べた。翌,1月9日は日本医療法人協会の医療安全調査部会を予定していたので,9日の医療安全調査部会で検討して,検討結果を提示する旨厚労省に回答した。留守の日本医療法人協会事務局のパソコンにメールで図11が届いたのは,筆者が厚労省で目にしたのより後の,1月8日21時のことである。1月9日にとりまとめた日本医療法人協会修正案が図14である。1月10日,11日,12日は休日であり,中1日おいて,1月14日朝10時から第4回施行に係る検討会が開催されている。筆者が,西澤寛俊構成員個人の見解と述べたのはこのような経緯によるものである。図14の日本医療法人協会案は,1月21日開催の西澤班に提出された。図14の日本医療法人協会案を基に,厚労省と筆者との直接交渉を繰り返した結果,前述の如く出来上がったものである。山本和彦座長の質問と筆者の回答の意味するところは,医療起因性要件は通知事項であるが,図11のような例示は運用レベルの話であり,通知事項になじまないということを筆者が述べたものである。果たして,合意に達した図13も直接通知事項とはならず,参照別紙とされたのである。
図16 12月24日西澤班資料「医療に起因する(疑いを含む)」死亡又は死産の考え方(例)

おわりに
 水面下の交渉も含め,医療事故の定義,センター業務,支援団体業務について,ポンチ絵の推移を基に解説を行った。
 医療現場にとって,医療事故調査制度の根幹を知ることが,医療を行う上の1丁目1番地である。際どいやり取りの中で仕上がった制度であり,微妙な部分は解釈に委ねられている。制度の構築に関与した筆者らの意図が,センターその他の人々の恣意的解釈によって歪曲されることがないよう注視していただきたい。医療事故調査制度は医の倫理の問題ではない。法律事項である。条文を法律に沿って厳密に解釈することこそ重要である。




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