=== 新春随筆 ===

       七回目の年男になって思う
(昭和9年生)



北区・上町支部
 高城 節守

 今年の干支は戌年なので7回目の年男である。来年はまだまだ先だと思っていた父親の亡くなった年に追いつくことになるが,この年まで長生きするとは思っていなかった。
 日本は長寿国となったとはいえ皆が長生き出きるわけではない。長寿を目指し日頃節制,努力していても世の中何が起こるか分からない。ごく普通の食生活をし,適度に仕事をし,幸いにも不慮の事故にも遭わず,致命的な大病にもならずにいたら長生きしていたという人が多いのではないかと思う。私自身長生きしようと節制した生活をしてきたとは思っていない。食生活では苦手のものはあるがまったく食べられないわけではなく,食物アレルギーもなく,体質なのかいくら食べても太らないのでカロリー等考えず何でも腹いっぱい食べてきた。アルコール類は好きなのでほぼ毎晩晩酌(主にビール)をしているが酔っぱらうほどは飲んでいない。運動は若い時からやってきたテニスをまだ続けているが,あくまで趣味の一つとしてやっているのだが少しは健康に役立っているのかもしれない。年なりに体のあちこちに老化現象は出てきているが,今のところ致命的な病気はなく,この分だともう少し長生きしそうである。
 しかし長生きは幸せだろうか。昔の老人は尊敬され,大事にされたが,今は邪魔者扱いである。年金は減らされ,医療費の増加は高齢者が増えたためと言われ,医療費の自己負担は増加されそうであり,交通事故率は高齢者が高いから免許証を返納せよと迫られる。駅の切符販売や銀行等のATM化等色々機械化されてきた。今でこそ何とか使えるようになったが初めは何度か失敗した。今でも時々機械の前で戸惑っている老人を見かけることがある。パソコンも一応使っているが主にメールとワードと写真のプリント位で,時々インターネットを使うが目的のものにたどり着けないことがある。テレビを見ていてもインターネットで申し込めとかホームページを見よとか出る。今やパソコンやスマートフォンでインターネットを自由に使えないと生活し難い世の中になりつつある。また長生きすればそれだけ生活費が掛かるわけで,「長生きはリスク」とか「長寿破産」と言う言葉もある。さらに認知症になる確率も高くなる。
 これでは長生きしてもいい事はなさそうで,佐藤愛子ではないが「長寿。何がめでたい」である。願わくは適当な時にコロリといきたいものだ。




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