鹿市医郷壇

兼題「工面(くめん)」


(457) 樋口 一風 選




清滝支部 鮫島爺児医

   月き行こち工面したどん億じゃ無理
  (つきいこち くめんしたどん おっじゃむい)
(唱)ちっとそっとん金じゃ駄目じゃろ
  (ちっとそっとんぜんじゃ ぼっじゃろ)
 
 ネットで調べました。世界中なら何とか旅費は分かりそうですが、月までの旅費は分かりませんでした。一億円じゃ無理でしょう。荒唐無稽とも思われますが、これはそうじゃないような気もします。遠くない先には実現しそうな気もします。
 ドンキホーテ型にも似て面白い発想だなと思いました。スケールの大きい、こんな句もあってもいいのではと、面白く読みました。




城山古狸庵

   あと三日工面が付かにゃ空手形
  (あとみっか くめんがつかにゃ からてがた)
(唱)冷や冷やもんの怖ぜ決済日
  (ひやひやもんの おぜけっさいび)

 友人に零細企業の経営者がいました。年度末には手形決済に奔走していたのを思い出しました。原句では「うっつぶるっ」とありましたが、リズムが悪いので空手形に変えました。実際は手形ではないかも分かりませんが、お金の工面には違いはないので手形にしました。
 景気が良いと世間では言っていますが、経営をするにはそれぞれ、ご苦労があると思います。




上町支部 吉野なでしこ

   年度末金の工面に疲るい足
  (ねんどまっ ぜんのくめんに だるいあし)
(唱)頭を下げけ相当駆け回っ
  (びんたをさげけ じょじょかけまわっ)

 いろいろな事業主さんが居られますが、潤沢な資金のある会社は、そうないと思います。
 皆さん、年末には、従業員にボーナスの支給もあるし、それぞれの決済もあることでしょうから、資金繰りは大変だと思います。車があるとはいえ相当歩きますので、足はもうパンパンで重くなります、ご苦労が目に見えるようです。



 五客一席 紫南支部 二軒茶屋電停

   金工面苦労い感謝ん卒業式
  (ぜんくめん くろいかんしゃん そっぎょしっ)
(唱)親ん難儀が凄ぜ身い沁みっ
  (おやんなんぎが わぜみいしみっ)


 五客二席 川内つばめ

   年の瀬い工面も出来じ毎日そば
  (としのせい くめんもでけじ めにっそば)
(唱)二に三さん日ち待てばボーナスも出でろ
  (にさんちまてば ぼーなすもでろ)

 五客三席 印南 本作

   火の車頭を下げっ金工面
  (ひのくいま びんたをさげっ ぜんくめん)
(唱)常時ん事てな相手も呆れっ
  (ねんじゅんこてな えてもあきれっ)


 五客四席 醤油屋孫一

   金ぬ工面おかげでハワい家族で旅行
  (ぜぬくめん おかげではわい けねでたっ)
(唱)楽しかったで次ぎょ計画っ
  (たのしかったで つぎょぐんたてっ)


 五客五席 清滝支部 鮫島爺児医

   学資をば工面したどん不合格
  (がくしをば くめんしたどん ひっちゃえっ)
(唱)来年また言てがっかいさせっ
  (でねんまたちゅて がっかいさせっ)

秀  逸

城山古狸庵
 月末の工面に女房んヒスが出っ
(げっまっの くめんにかかん ひすがでっ)
 死ん限い工面ぬしたが間け合わじ
(しんかぎい くめんぬしたが かけおわじ) 
 如何んして買うか工面の一張羅
(いけんして こうかくめんの いっちゃびら)


清滝支部 鮫島爺児医
 工面しっ遺言くば書たて違ごち言っ
(くめんしっ ゆおくばけたて ちごちゆっ)
 工面しっ合わせてみたや出来た仲
(くめんしっ おわせてみたや でけたなか)
 人生の残いの工面ケセラセラ
(じんせいの のこいのくめん けせらせら)
 肩を揉ん孫ん工面な直っばれっ
(かたをもん まごんくめんな すっばれっ)

上町支部 吉野なでしこ
 肥えた分布ん工面で服く作っ
(こえたぶん きれんくめんで ふくつくっ)


川内つばめ
 他人ん為工面ぬしかて疲れとけっ
(ひとんため くめんぬしかて だれとけっ)
 学校でん教せっ欲し金工面
(がっこでん ゆっかせっほし ぜんくめん)
 金金ち心情ん工面なしもせんじ
(ぜんぜんち ねすんくめんな しもせんじ)


今月の投句から 一 風
 兼題がだいぶ難しかったらしく、皆さん苦労されたようです。今月気付いたことは助詞の無い句が多いようでした。例えば「女房(か)か工面」というのがありました。「女房(かか)が工面」だと思います。
 また「卒業でけ感謝」、これは「卒業出来っ感謝(そっぎょでけっかんしゃ)」だろうと思います。
 「涙飲ん(なんだのん)」は「涙を飲ん(なんだをのん)」だろうと思います。どれも助詞を入れると字余りになるので、別な言葉に変えるか、中七に持って行くか、工夫してみて下さい。
 また、郷句みたいな短詩でも、「誰が何を」とはっきり分からないと、読者に意味が通じません。
 「今御時世(こんごじせ)バナナ叩きじゃ工面できん」という句がありました。何を訴えたいのか読む人に理解できるかどうか、問題は「バナナ叩き」です。バナナの叩き売りのことだろうと思いますが、比喩は、何々のようなと、付けないと読む人は混乱します。上五も「此ん御時世(こんごじせ)」が良いです。推敲が欲しいと思いました。




薩 摩 郷 句 募 集

◎2 号
題 吟 「 溜息(ういっ)」
締 切 平成30年1月5日(金)
◎3 号
題 吟 「 道(みっ)」
締 切 平成30年2月5日(月)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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