随筆・その他

リレー随筆


車での帰省の思い出


鹿児島県立大島病院 里園 秀之

 リレー随筆を頼まれ,話題に悩んだ末思いついたのが帰省の思い出。文章をまとめるのは苦手で,分かりづらいところもあるが,とりあえず書いていこうと思う。
 私の地元は鹿児島県日置市吹上町で,高校も県内のため大学は県外,できれば関東以北に行きたいと思っていた。縁あって栃木県の大学に進学することができ,そこで通学しながら運転免許を取得した。免許取得後は例にもれず自分の車がほしくなり,定期試験そっちのけで中古車のウェブサイトを漁った末,11年落ち・走行距離11万キロ超え,中古のアコードワゴンを親に頼んで買ってもらった。道具を得ると使いたくなるのは人の性で,再試験で留年の危機に瀕しながらも夜な夜なドライブに出かけ,国道4号や50号でトラックと競争しながらアクセルを踏んでいた。
 大学に入学して1年が過ぎるころ,山口県出身の友人(A君)と同郷の友人(B君)と3人,車で帰省しようという話になった。A君の軽自動車で栃木県から山口県まで2泊3日,交代で運転するというもので,当時の自分は非常にわくわくした。3人とも免許とって半年で,面白いことに全員運転の性格が異なっていた。A君はバランスがとれており,スピードを出すところは出し,ゆるめるところはゆるめていた。カーナビの到着予想時刻通りの運転だった。対してB君は安全運転主義で,めったなことがなければ追い越し車線にはいかず,おかげでカーナビの到着予想時刻がどんどん遅くなっていった。私はというと,アクセルをベタ踏みしていた。カーブではなるべくブレーキを使わず,下り坂でもアクセルを踏んでいたため,同乗の2人が悲鳴を上げていた。おかげでカーナビの到着予想時刻はどんどん早くなったが,以降(何故か)ハンドルを握る機会は減った。無事山口県にたどり着き,フグの刺身を食べながら,これなら自分一人でも車で帰省できるのでは,と思った。
 大学2年の夏休み,まだ初心者マークがついていたが,決行の時が来たと感じた。ちなみに自分の車は,ETCはもちろん,カーナビもついていない。ガソリンスタンドの店員さんにはエンジンルームの冷却水?が漏れている,修理した方がいいですよと言われたが,修理していない。何故この状態で行けると思ったのか,今振り返ると甚だ不可解だが,19歳の自分は何とかなると思い,栃木ICを意気揚々と通過した。そして,最初のジャンクションで道を間違えた。
 カーナビがないため,出発前に主要なジャンクションをメモにとっていた。東京の首都高速は道が分かりづらいため,そこを通らずに中央道から行こうと考えていたが,最初のジャンクションで間違えてしまった。当時はガラケーで,スマホのようなカーナビアプリはなかった。さすがにメモでは無理だったか,と思いSAで800円の高速道路の地図を購入,以降はジャンクション手前のSAまたはPAに必ず立ち寄り,道を確認していったため,間違うことはなくなった。
 道が分かればあとはすんなりいくと思われた。が,ここで二つ目の問題が生じた。出発前は意識していなかったのだが,この日は8月中旬,お盆の帰省ラッシュ真っ只中であったのだ。800円の地図を片手に大阪までは何とか行けたものの,25kmの大渋滞に巻き込まれてしまった。今まで経験したことがないほど車が進まない。ようやく抜けたときには3時間が経過していた。時刻は夜中の1時,さすがに眠くて仮眠を取ろうとSAやPAを探すがどこも満車。やっと駐車できたのは兵庫県のPAだった。
 その後も主要都市でことごとく渋滞に引っ掛かった。一番ひどかったのは広島県で,15kmを3時間かけて通過した。この時にはもう身体が慣れてしまっていた。諦めにも似ていたかもしれない。渋滞を抜けて以降は特に大きなトラブルはなく,出発から(仮眠を含め)35時間後,実家の鹿児島県日置市吹上町に無事戻ることができた。体力はもちろん車のガソリンもぎりぎりであった。
 さすがに鹿児島から栃木へ帰るのにまた高速道路を使おうとは思わなかったので,福岡~東京間でフェリーを利用した。もうトラブルはないと思われたが,大学の寮を目前にして最後の問題が生じた。ハンドブレーキの警告灯が点灯し,消えなくなったのである。心なしか,ブレーキの効きが悪くなったような気もした。後日修理工場に車を持っていき,見てもらうとブレーキオイルが漏れていた。もしこれが往路であったら,と思うとさすがに寒気がした。
 様々なトラブルを経て無事に初心者の車帰省を終えたが,当時も今振り返ってもよく事故に遭わなかったなあ,と思う。今後もよくよく気を付けていきたいと思う。
次号は,鹿児島県立大島病院の鄒 明憲先生のご執筆です。(編集委員会)





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