=== 随筆・その他 ===


鉄欠乏性貧血治療後に必要な食事対策
東区・郡元支部
(デイジークリニック) 武元 良整

 鉄欠乏性貧血の治療は文献(1)によると,
 ①まず食事から,バランスよく。
 ②鉄剤を6カ月間内服継続する。
 ③貧血原因の探索目的で消化器と婦人科疾患の精査を勧める。
 ④治療後,赤血球形態が小球性から正球性へ改善したことをMCVで確かめる。
 ⑤初診時の貧血症状が改善すれば治療終了です。
 今回は,貧血治療9カ月後に,倦怠感を訴えた症例です。

<鉄欠乏性貧血:治療9カ月後の症例>
症 例:40歳代の女性
 主訴:寝ても寝ても眠い。倦怠感。
 病歴:健診で貧血を指摘され9カ月間鉄剤内服後に来院。9カ月前の血色素(Hb)が8.5,来院時のHb値は14.2と改善(図1)。
 背景:飲酒,喫煙歴なし。身長158.6cm,体重53.1kg,BMI:21.1。
 末梢血検査:CBC:全血算(complete blood count)

WBC:6800/μL,RBC:437万/μL,Hb:14.2g/dL,MCV (mean corpuscular volume:平均赤血球容積):95.0f L,MCH(mean corpuscular hemoglobin:平均赤血球血色素値):32.5pg,PLT(血小板数):29.3万/μL,網赤血球:1.5%

 経過:血液生化学検査では肝機能正常範囲,脂質異常症なし。数日後の検査報告で,ビタミンB12の低値(323pg/mL)を認めた。初診時,大球性(MCV:95)の傾向,倦怠感などからビタミンB12の低下によると判断しビタミンB12静注を開始。翌日には「体が楽になり,家事がはかどった。寝起きがよくなった」との事。その後,ビタミンB12内服治療に切り替えた。

最終診断
 1. 鉄欠乏性貧血治療後のビタミンB12低下
 2. 大球性:MCV95.0
 3. 血液像(図1)は大小不同1+あり,多染性1+,貧血回復期

 ビタミンB12の基準値について:ビタミンB12の値が323ですから「正常範囲ですね。」と患者側から質問されます。「いいえ,違います。それは基準値の範囲です」と返答するしかありません。検査センターからのコメントは,ビタミンB12の報告用紙の記載(180-914pg/mL),これは正常値ではなく基準値,多数の健康とおもわれる方の測定可能範囲。正常値ではないとの説明です。健康人のビタミンB12値は図1のように500-1500です。500以下では「倦怠感・疲労・たちくらみ,頭痛など」のビタミンB12欠乏に特有の訴えが常にあります。

図 1 末梢血液像-大球性を認め,大小不同が軽度あり(MCV:95.0),多染性も軽度。
(末梢血液画像は鹿児島市医師会臨床検査センター血液検査室へ依頼し撮影いただきました)

終わりに
 Hb値が2.9g/dLの症例を6月号に紹介しました(2)。内科的治療(鉄剤内服や静注)は拒否,食事で改善したいという希望でした。その症例への反省から,現在は貧血治療の基本はまず「食事」と説明し,鉄剤内服などの治療開始と同時に管理栄養士作成のチラシ(図2)を外来で毎月配布し,「鉄だけでなく,ビタミンB12などへの関心」を高める啓発活動を行っております(3)。

文 献
1. 飯野昌樹:鉄欠乏性貧血 貧血症 診断と治療のABC 最新医学別冊 P137-143,2017
2. 武元良整:女性労働者の健康管理 産業医の役割 鹿児島市医報 第56巻第6号(通巻664号)P30-31,2017
3. 藤川徳美:うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった 光文社新書 2017年7月初版

図 2




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