=== 随筆・その他 ===

日本医療安全調査機構は医療安全の障害と化した
中央区・清滝支部
(小田原病院) 小田原良治

 2017年(平成29年)8月30日,日本医療安全調査機構は,「医療事故調査・支援事業運営委員会」で,「センター調査の結果」を公開する方針を示したという(CBnews2017年8月30日15:00)。これが事実とすれば,センター業務の逸脱行為である。また,報告が増えない背景には「事故報告の判断基準」があるという,とんでもない議論がなされているようである(メディファックス7621号)。これまでも,センターは,その運営において幾多の問題点を露呈していた。今回のセンター調査の結果の公開発言や,報告数を云々する姿勢は,センター自体が制度を理解していないことの現れであり,現センターがこのままセンター機能を担うことには問題があろう。いまや,医療事故調査・支援センターそのものが「医療安全」の障害と化していると言わざるを得ない。

センターの果たすべき機能は何なのか
 2015年(平成27年)3月20日公表された,医療事故調査制度の施行に係る検討会とりまとめ「医療事故調査制度の施行に係る検討について」17ページ(図1)にセンター業務について明確に整理がなされている。
 図1左枠内には,法律事項が記載されている。医療法第6条の16は,「医療事故調査・支援センターは,次に掲げる業務を行うものとする。」とされており,第1号で,第6条の11第4項の規定による報告(センター報告)により収集した情報の整理及び分析を行うこととしている。即ち,図1ポンチ絵の左側にある複数の病院からの報告を収集し,情報を整理,類別化して分析を行うことが第一の業務である。さらに,これを受けて,第2号で,第6条の11第4項の規定による報告(センター報告)をした病院等の管理者に対し,前号の(1号業務で行った)情報の整理及び分析の結果の報告を行うこととされている。
 即ち,報告された事例を匿名化・一般化し,データベース化,類型化するなどして類似事例を集積し,共通点・類似点を調べ,傾向や優先順位を勘案する。
 この際,「個別事例についての報告ではなく,集積した情報に対する分析に基づき,一般化・普遍化した報告」を行うことが明記されており,さらに,医療機関の体制・規模等に配慮した再発防止策を検討しなければならない構図となっている。このような仕組みであるから,「医療安全の向上」に貢献しうるものとしてセンターが設置されたものである。また,その結果は,図1ポンチ絵の右側部分のセンター報告をしてくれた複数の医療機関にフィードバックするという仕組みであったが,2016年(平成28年)6月24日の医療法施行規則改正により,センター報告を行った医療機関のみでなく,その他の医療機関にも情報提供できることとなったものである。個別の事例についての報告ではなく,集積した情報に対する分析が業務であることは明示されているのである。個別事例の報告を行った時点で,医療安全調査機構は医療安全のための組織ではなくなる。即ち,「医療事故調査・支援センター」として,医療安全調査機構は不適任であるということである。

センター調査の内容
 センター調査については,通知事項で,院内調査終了後のセンター調査は,院内調査の検証が中心である。院内調査終了前のセンター調査は院内調査の進捗状況を確認するなど医療機関と連携し,早期に院内調査の結果が得られる場合は院内調査の結果を受けて検証を行うものであり,センター調査は,あくまでも検証業務であることが明示されている。従って,センター調査業務で得られた情報も,分析という点においては,第6条の11第4項に規定する院内調査結果の報告と全く同じ情報である。センター調査の情報も他の院内調査のセンター報告と同じように,第6条の16の規定に従い,複数事例の類別化,分析を行い,その共通課題を見つけることがセンター業務である。
 センター調査結果の公開を行うことは法律からの逸脱であり,このような機関に,センター機能を担う資格はないというべきであろう。
 また,医療事故調査制度の目的は,医療安全の確保であり,個人の責任を追及するためのものではないため,センターは,個別の調査報告書及びセンター調査の内部資料については,法的義務のない開示請求に応じないこととされ,センターの役員若しくは職員又はこれらの者であった者は,正当な理由がなく,調査等業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないとなっている。公開された場合には,関係者の個人責任を問うべきであろう。
 第6条の16の第6号は,医療事故の再発の防止に関する普及啓発を行うことと,センター業務の1つが謳われているが,その通知において,集積した情報に基づき,個別事例ではなく全体として得られた知見を繰り返し情報提供すると記している。今回,医療安全調査機構が打ち出した,「公開」に当たるものはどこにもない。これは,脱法行為であり,医療安全調査機構はセンターとして不適任である。

おわりに
 最近,政府機関に関与している医療関係者からの不適切な発言が目立つ。今回の医療安全調査機構の発言は,まさに制度の根幹を揺るがす不適切な発言である。法律無視のセンターに対しては,監督権者の厚労省はしっかりと対応を行うべきであろう。現センターは,医療安全の担い手として不適任であり,センター指定の取り消し,又は,役員の入れ替えが必要であろう。
 センターは権威的組織ではない。いかにも権威的組織であるかのような,センターの行動は厳しく糾弾すべきであろう。

 この論考は,日本医療法人協会ニュース第399号(平成29年9月1日)に掲載されたものを一部修正したものです。



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