鹿市医郷壇

兼題「叫っ(おらっ)」


(454) 樋口 一風 選




清滝支部 鮫島爺児医

叩っ売い地声で叫れっ客く寄せっ
(たたっうい じごえでおれっ きゃくよせっ)

(唱)面白と可笑しゅ売っ啖呵売い
  (おもしとおかしゅ うったんかうい)

 この句を見て、バナナの叩き売りが浮かびました。それと寅さんです。その昔、縁日や街頭でバナナの叩き売りを見掛けました。面白く可笑しく、名調子でお客を自分のペースに引き込んで売っていました。
 大きな地声で叫ばないと通行人に聞こえません。まさに叫んでいます。広辞苑には「啖呵売(たんかうり)」と載っていますが、寅さんの映画では隠語ですが「啖呵売(たんかばい)」と言っていました。




城山古狸庵

納屋ん馬場べ旗と叫れちょっ次期候補
(なやんばべ はとおれちょっ じきこうほ)

(唱)選挙ん話しゃせじ名を連呼
  (せんきょんはんしゃ せじなをれんこ)

 照国神社の初詣で代議士候補者と分かる人が、旗を立てて名前を叫んでいました。
 納屋ん馬場の人混みの中で、必死に名前を叫んでいる様子が分かります。納屋ん馬場と旗で成功しています。この句の原句は「旗と立て」でしたが、旗を立てでは、そのままのスケッチですので、「旗と」にすると句の味が濃ゆくなり、必死に叫んでいる次期候補者の状況が見えてきます。




紫南支部 二軒茶屋電停

酔れぼが妻と間違っやれ叫っ
(よくれぼが かかとまっごっ やれおらっ)

(唱)後姿がそっくいの美人
  (うしとすがたが そっくいのしゃん) 

 誰と、どう間違ったのか、句には書いてありませんが。どうせ酔っぱらいです。遠くや、後ろ姿でしょう。酔っ払いとはそんなものでしょう。


 五客一席 城山古狸庵
釣ったどち凄ぜ叫れたが小け雑魚
(つったどち わっぜおれたが ちんけざこ)

(唱)其い限い当や無し素駄帰い
  (そいぎいあたや のしすだもどい)


 五客二席 清滝支部 鮫島爺児医
蝙蝠でセコムが叫れっ大騒動でなっ
(こおもいで せこむがおれっ うそでなっ)

(唱)夜の最中い歯痒いか誤報
  (よんのすなかい はがいかごほう)


 五客三席 川内つばめ
上司ん愚痴つ腹から叫ろっみろごちゃっ
(うえんぐっ はらからおろっ みろごちゃっ)

(唱)じっ我慢っちょっ辛れ宮仕え
  (じっきばっちょっ つれみやつかえ)


 五客四席 印南 本作
三億円ち震えっ叫れっ目が覚めっ
(さんおっち ふるえっおれっ めがさめっ)

(唱)糠喜っの残念な夢  
  (ぬかよろこっの ざんねんなゆめ)


 五客五席 醤油屋孫一
可愛ぜ児じゃが部屋中で叫っ喧しゅし
(むぜこじゃが へやじゅでおらっ やぜろしゅし)

(唱)叱れば怒っ難し躾
  (がればはらかっ むっかししつけ)


秀  逸

城山古狸庵

朝帰い裏庭で叫っ隣の亭主
(あさもどい せどやでおらっ つっのてし)

猫ん恋隣つっの雉き猫しずい凄わぜ叫っ 
(ねこんこい つっのきしずい わぜおらっ)

清滝支部 鮫島爺児医

サイレンが昼飯ち叫れだ戦時中
(さいれんが ちゅはんちおれだ せんじちゅう)

火の用心叫れっ廻った郷中ん子供
(ひのゆじん おれっまわった ごじゅんこど)

太て声で叫っ応援に貰ろ元気
(ふてこえで おらっおえんに もろげんき)

手も上げじ叫ったくった狡ね野次
(てもあげじ おらったくった ずっねやじ)

川内つばめ

叫ばんじネットで叩っ妙だ世間
(おらばんじ ねっとでおらっ すだせけん)

中国じゃ不満を叫らべば捕まえっ
(ちゅうごっじゃ ぐぜをおらべば つかまえっ)

印南 本作

凄ぜ美人に好っじゃち叫れっ嫁いしっ
(わぜしゃんに すっじゃちおれっ よめいしっ)

醤油屋孫一

遊戯会悪戯って叫ろで児は元気
(ゆうぎかい あまっておろで こはげんき)

風邪ひっで叫れで歌とだやけ嗄れ声
(かぜひっで おれでうとだや けかれごえ)



今月の投句から
 兼題は「叫っ(おらっ)」でした。「鶏が叫っ(おらっ)」という句がありました。「鶏(とい)が鳴っ(おらっ)」と書き「叫っ(おらっ)」とは書きません。「叫っ(おらっ)」とは字の通り叫ぶことです。題が平仮名の「おらっ」の時は「鳴っ(おらっ)」「叫っ(おらっ)」でも構いません。
 「 」を付けた句が二句ありました。川柳も、郷句も、原則「 」は付けません。付けないでも意味の分かる句を作りましょう。
 「もみじの手」という句がありました。比喩として、使いたくなる言葉ですが、慣用句としては、「紅葉のような手」で、「紅葉の手」ではありません。

 薩摩郷句鑑賞 107

客が来っ女房あ湯気ごみ着物を着っ
(きゃっがきっ かかあほけごみ いしょをきっ)
                            市来野頬朗

 入浴中に客がきたので、あわてて風呂から上がったのであるが、体を拭く暇ももどかしく、着物を着たのであろう。まだ湯気が立っている体に着物をひっかける様子を、「湯気ごみ着物を着っ(ほけごみいしょをきっ)」と表現したあたり、実に生き生きとしている。
 額に汗をかきながら「どうもすみませんでした」と、気さくな奥さんの顔が目に浮かんでくる。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋


薩 摩 郷 句 募 集

◎11 号
 題 吟 「 騒動(そど)」
 締 切 平成29年10月5日(木)
◎12 号
 題 吟 「 工面(くめん)」
 締 切 平成29年11月6日(月)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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