編集後記


 先日,大学院時代の恩師,佐伯武頼鹿児島大学名誉教授からライフワークの高シトルリン血症に関する著書「シトリン欠損症」をいただき,拝読しました。この病気は,日本で発見され,病態解析から治療方法に至るまで日本がリードしてきた遺伝性疾患です。患者さんは酵素活性低下に対する自己防衛本能から飲酒や糖質摂取を嫌うものの,酒の肴のような高タンパク,高脂質食を好む特徴的食嗜好があります。我が国には7千人に1人と意外と多く,医原性の発症もありえ,対処を間違うと医療関連死に至る可能性もあるので認識しておくべき疾患と思われます。
 誌上ギャラリーは山口淳正先生の「海洋大国日本」,鹿児島港に係留中の日本丸と桜島との共演で海の日に相応しい一枚です。海の日は,平成8年から国民の祝日として制定され,平成15年よりハッピーマンデー制度により,7月第3月曜日になりましたが,由来は,明治9年,明治天皇が東北地方巡行の帰路に燈台巡視船汽船「明治丸」で青森から函館を経由して無事横浜港にご帰着された7月20日を祝う「海の記念日」だそうです。
 論説と話題は,5月13日,14日に高松市で開催された第8回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会の参加報告です。学会のホームページを見ると,身近な立場で健康をサポートする医療,介護,福祉,保健をまとめたものが「プライマリ・ケア」とあります。総合医療専門医をはじめ,健康の社会的決定要因と社会的処方,糖質制限食,高齢者の買い物難民対策などと多彩なシンポジウムが開催されたようですので,報告をご一読ください。
 医療トピックは,糖尿病薬の固定容量配合剤に関するもので,すべての薬剤に共通するのは2型糖尿病の第1選択薬として用いない点と,腎機能に注意をする必要がある点です。
 学術は2題。1つが市立病院から,術後40年目に転移再発を来した乳がんの症例報告で,他臓器がんに比べて晩発再発の多い乳がんですが40年目とは驚きです。もう一つは,市外科医会春季例会の症例検討会で発表された5施設の先生からのレポートで,外科らしい術式の改善から珍しい症例報告まであり,興味深く拝読しました。
 医師会病院だよりは,消化器内科の現状の報告と24時間ホルター心電図検査の受託を行っているお知らせです。
 随筆・その他は,古庄弘典先生の切手が語る医学,武元良整先生の鉄欠乏性貧血における鉄以外にも不足する増血成分のお話,鮎川卓朗先生のリレーエッセイ,小田原良治先生のシリーズ医療事故調査制度とその周辺です。
 注目したのは小田原先生のお話で,医療事故調査制度をめぐる医療安全(再発予防)を目指す日本医療法人協会を中心とする医療側と原因糾明(責任追及)を目指す厚労省の激しい戦いの結果,医療側が勝利したものの,厚労省の逆襲に油断できない状況にあることが分かりました。また,文中に出てくる院外医療事故調査検証委員会のモデル事業と言える医療事故調査制度サポートセンターを当会が開設したのは全国的に見ても画期的な取り組みです。「診療関連死」で不安に思った際に「医療事故」に該当するか否かを相談でき,判断をサポートしてもらえますので,活用していきましょう。
 各種報告には,五月晴れの中で開催された新制当会設立70周年記念親善ゴルフ大会の成績と優勝された先生の喜びのコメントが載っています。
 7月17日,海の日にバーテンダー協会のチャリティーカクテル・クルージングパーティーが開催されます。夕暮れ時の錦江湾の洋上で飲むのは心地よいものです。今年も参加して,海洋大国日本に思いを馳せながら,美味いカクテルを楽しもうと思います,乾杯!!

                             (編集委員 島田 辰彦)

                                              

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