鹿市医郷壇

兼題「兄弟(きょで)」


(452) 樋口 一風 選




城山古狸庵

兄が着た 制服が良か風い 合ごっなつ
  (あにょがきた ふっがよかふい おごっなつ)

(唱)少と古りどん 寸法もひちゃっ
  (ちっとふりどん すんぽもひちゃっ)

 賢兄愚弟とは言いませんが、兄は憧れでした。その兄の着た名門校の制服がぴったりと、体に合ってきました。兄さんの身長にも追付きそうです、お古だと思っていましたが、体形にも馴染んで、自慢の制服です。
 十七音字の中に、兄を尊敬する、弟の心情が詠み込まれて、奥の深い句です。




紫南支部 二軒茶屋電停

サプライズ 兄弟して企画だ 夫婦旅行
  (さぷらいず きょでしてぐんだ みとりょこう)
(唱)感謝ん気持っ 言てプレゼント
  (かんしゃんきもっ ちゅてぷれぜんと)

 薩摩郷句もカタカナ語が入ると、何となくスマートになります。
 テレビの、ある番組に恩人へのサプライズで恩返しをするという番組がありました。
 それを思い出しました。かねては顔を見せない子供たちが、両親の結婚記念日か、誕生日かに、両親を喜ばせようと企画しました。読んで両親の嬉しそうな顔が浮かんできます。大隅地方では「企画や計画を「ぐんたて」とか「ぐん」とか言います。原句には「企画」とだけ書いてありましたので、振り仮名をつけました。




清滝支部 鮫島爺児医

兄弟喧嘩 終われば仲は 元て戻っ
  (きょでげんか おわればなかは もてもどっ)
(唱)後はけろっち 二人で勉強
  (あとはけろっち ふたいでべんきょ)

 幼い頃の兄弟喧嘩は他愛ないもので、成長の過程の一部でもあるのでしょう。お互いの自己主張や妥協のしかたなど、自然と身について来るのでしょう。大きくなると複雑な感情も入り、難しくなりますが、幼い頃の喧嘩は、仲の良い証拠でもあるのでしょう。


 五客一席 上町支部 吉野なでしこ

兄弟二人 どっちが兄か 誠て似っ
  (きょでふたい どっちがあにょか まこてにっ)
(唱)爺も間違ごて 無理も無か事っ
  (じいもまっこて むいもなかこっ) 


 五客二席 川内つばめ

年取った 親をば兄弟で 仲良看っ
  (としとった おやをばきょでで なかゆみっ)
(唱)近所隣の 衆ずいも褒めっ
  (きんじょとないの しずいもほめっ)


 五客三席 清滝支部 鮫島爺児医

少子化で 兄弟が居らん子 増えでけっ
  (しょうしかで きょでがおらんこ ふえでけっ)
(唱)従兄弟再従兄弟ん 味も知たんじ
  (いとこはとこん あっもしたんじ)


 五客四席 城山古狸庵

兄弟ん仲 瘤が付たなあ 難しゅし
  (きょでんなか こっがちたなあ むっかしゅし)
(唱)女房達の 入れ知恵も有っ
  (うっかたたっの いれぢえもあっ)


 五客五席 醤油屋孫一

多か兄弟で 一番強か 末子
  (うかきょでで いっばんつえか しいたれご)
(唱)上が鍛えっ 凄ぜ性根が入っ
  (うえがきたえっ わぜしょねがいっ)


秀  逸

上町支部 吉野なでしこ

兄弟全部 肥え方ずいも 親い似っ
  (きょでずるっ こえかたずいも おやいにっ)


城山古狸庵

母代い 兄が出っ来た PTA
  (はほがわい おにょがでっきた ピーチィーエ)
様な兄弟 通夜ん晩かあ 相続騒動
  (ざまなきょで つやんばんかあ そぞっそど)
兄弟んごっ 生きた従兄弟が 先き逝たっ
  (きょでんごっ いきたいとこが さきいたっ)


清滝支部 鮫島爺児医

兄弟じゃっで 同し時間に 奪合こ便所
  (きょでじゃっで おなしじかんに ばこまなか)
兄弟も無し スマホと遊っ お留守番
  (きょでものし すまほとあすっ おするばん)
兄弟全員 仲良ゆ育って 親へ感謝
  (きょでずるっ なかゆそだって おえかんしゃ)
兄弟じゃって 迎めん順が 時か狂っ
  (きょでじゃって むけめんじゅんが とかくるっ)
兄弟揃っ オリンピックい 出ろち夢
  (きょでそろっ おりんぴっくい でろちゆめ)
岸佐藤 兄弟を総理い 偉らか親
  (きしさとう きょでをそうりい えらかおや)


川内つばめ

兄弟喧嘩 つがんねこっち 親が叱っ
  (きょでげんか つがんねこっち おやががっ)
何時迄も 固か絆ん 仲良へ兄弟
  (いっずいも かたかきずなん なかへきょで)
見た丈で 兄弟じゃち分かい 顔造作
  (みたぶんで きょでじゃちわかい つらぞさっ)


醤油屋孫一

並るだ兄弟 弟ち間違っ 恥ねこっ
  (なるだきょで おとちまっごっ げんねこっ)




 薩摩郷句鑑賞 105

久振い 兄弟が揃ろたて 遺産騒動
  (さしかぶい きょでがそろたて いさんそど)

 迫  藤子

 兄弟姉妹も、それぞれ世帯を持って生活するようになると、案外会う機会が少なくなるものである。
 遠くへ嫁いでいった姉妹はもちろん、兄弟でも、結婚式だとか、葬儀だとかでないと、あとは盆や正月ぐらいしか顔が揃わないことも珍しくはない。
 この場合、多分葬儀で兄弟姉妹が久し振りに会ったというのに、醜い争いが起こったのである。欲がからむと、あさましくなるもの。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋


薩 摩 郷 句 募 集

◎9 号
 題 吟 「 叫っ(おらっ)」
 締 切 平成29年8月5日(土)
◎10 号
 題 吟 「 仕事(しごっ)」
 締 切 平成29年9月5日(火)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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